January 20, 2005 Vol. 352 No. 3
適量のアルコール摂取が女性の認知機能に及ぼす影響
Effects of Moderate Alcohol Consumption on Cognitive Function in Women
M.J. Stampfer and Others
過度のアルコール摂取が認知機能に有害な作用を及ぼすことは十分に立証されているが,適量の摂取の影響については明らかではない.
1995~2001 年に,看護師健康調査(Nurses' Health Study)に参加した 70~81 歳の被験者 12,480 人の認知機能を評価し,2 年後に 11,102 人の追跡評価を行った.アルコール消費量を 1980 年から定期的に確認した.多変量補正平均認知スコアと,認知機能障害(スコアの下位 10%と定義)および経時的な認知機能の大幅な低下(低下の分布において下位 10%に属する変化と定義)の多変量補正リスクを算出した.女性のサブグループでは,アポリポ蛋白 E の遺伝子型に従った層別化解析を行った.
多変量補正後,適量飲酒者(1 日当りのアルコール摂取量が 15.0 g 未満 [およそ1 杯])は,非飲酒者よりも平均認知スコアが高かった.認知機能障害の相対リスクは,適量飲酒者では非飲酒者と比較して,われわれが行った一般認知能力検査で 0.77(95%信頼区間0.67~0.88),全検査の結果を組み合せた総合認知スコアで 0.81 であった(95%信頼区間 0.70~0.93).認知機能の低下に関する結果も同様で,たとえば,われわれが行った一般認知能力検査によると,認知能力が 2 年間で大幅に低下する相対リスクは,適量飲酒者では,非飲酒者と比較して 0.85 であった(95%信頼区間 0.74~0.98).より多量の飲酒(1 日当り 15.0~30.0 g)と認知機能の障害または低下のリスクとのあいだには,有意な関連は認められなかった.リスクには飲物の種類(ワインやビールなど)による有意差はなく,また,アポリポ蛋白 E の遺伝子型との相互作用はなかった.
今回のデータから,女性では,1 日 1 杯までの飲酒によって認知機能が障害されることはなく,実際には認知機能低下のリスクが減少する可能性のあることが示唆される.