1990~2003 年の精神障害の有病率と治療
Prevalence and Treatment of Mental Disorders, 1990 to 2003
R.C. Kessler and Others
米国の精神保健医療制度は1990 年代に大きく変化したが,精神障害の有病率と治療率の変化についてはほとんど知られていない.
18~54 歳の米国民における精神障害の有病率と治療率について,過去約 10 年間の動向を検討した.全米併存疾患調査(National Comorbidity Survey ; NCS)のデータは,1990~92 年に実施された家庭訪問による対面面接調査で 5,388 例から得られ,NCS Replication のデータは,2001~03 年に実施された面接調査で 4,319 例から得られた.米国精神医学会の『精神疾患の分類と診断の手引き第 4 版(DSM-IV)』を用いて,面接調査前の 12 ヵ月間にみられた不安障害,気分障害,薬物乱用障害を診断した.感情障害に対する治療は,精神科医療,その他の精神保健医療,一般医療,福祉サービス,代替医療の 5 つの精神保健医療部門で分類した.
過去 10 年間で,精神障害の有病率に変化はみられなかったが(1990~92 年:29.4%,2001~03 年:30.5%,P=0.52),治療率は上昇した.精神障害を有する患者のうち,1990~92 年には 20.3%が治療を受け,2001~03 年には 32.9%が治療を受けた(P<0.001).全体では,18~54 歳の住民のうち,1990~92 年には 12.2%が感情障害の治療を受け,2001~03 年には 20.1%が治療を受けた(P<0.001).精神障害の診断基準を満たす障害を有していたのは,治療を受けた患者の約半数にすぎなかった.治療率の有意な上昇(1990~92 年:49.0%,2001~03 年:49.9%)がみられたのは,部門別では一般医療(2001~03 年は 1990~92 年の 2.59 倍),精神科医療(2.17 倍),その他の精神保健医療(1.59 倍)に限られ,回答者の障害の重症度や社会人口学的特性とは独立していた.
治療率は上昇したものの,精神障害を有する患者の大半は治療を受けていなかった.有効な治療法がより多く実施されるようにするためには,治療の有効性に関するデータを集積する継続的な研究が必要である.