心臓移植後の拒絶反応の予防に対するダクリズマブ
Daclizumab to Prevent Rejection after Cardiac Transplantation
R.E. Hershberger and Others
インターロイキン-2 受容体に対するヒト化モノクローナル抗体,ダクリズマブ(daclizumab)は,腎移植レシピエントならびに単一施設試験での心臓移植レシピエントにおいて,感染リスクを増加させずに拒絶反応のリスクを減少させた.われわれはこれらの結果を心臓移植レシピエントで確認するため,多施設共同プラセボ対照二重盲検試験を実施した.
初回心臓移植レシピエント 434 例を対象に,標準的免疫抑制治療(シクロスポリン,ミコフェノール酸モフェチル,副腎皮質ステロイド)に加え,ダクリズマブあるいはプラセボのいずれかを 5 回投与する群に無作為に割付けた.主要エンドポイントは,中等度ないし重度の細胞拒絶反応,血行力学的に意味のある移植心の機能不全,2 回目の移植,6 ヵ月以内の死亡または追跡不能から成る複合エンドポイントとした.
試験開始後 6 ヵ月までに主要エンドポイントに達したのは,プラセボ群の患者 218 例中 104 例,ダクリズマブ群の患者 216 例中 77 例であり(47.7% 対 35.6%,P=0.007),絶対リスクは 12.1%減少し,相対リスクは 25%減少した.拒絶反応を起す割合は,ダクリズマブ群のほうがプラセボ群よりも低かった(25.5% 対 41.3%).主要エンドポイントに達した患者がエンドポイントに達するまでの期間の中央値は,試験開始後 6 ヵ月間(61 日 対 21 日)および 1 年の時点(96 日 対 26 日)で,ダクリズマブ群のほうがプラセボ群の約 3 倍長かった.細胞溶解療法を同時併用した場合,感染症による死亡例はダクリズマブ群のほうがプラセボ群よりも多かった(6 例 対 0 例).
ダクリズマブは,心臓移植後の急性細胞拒絶反応に対する予防薬として有効である.ダクリズマブを使用する場合は,死亡リスクが増加するため,細胞溶解療法の同時併用や予防的使用は避けるべきである.