September 8, 2005 Vol. 353 No. 10
他国の結核対策への投資による米国への見返り
Domestic Returns from Investment in the Control of Tuberculosis in Other Countries
K. Schwartzman and Others
結核の発生率が高い特定の国に結核対策改善のための投資をすることで,移住者における結核の発生率が低下し,米国にとって費用節減になるという仮説を立てた.
決定分析を用いて,メキシコからの合法的移民および難民,不法移住者,ならびに一時的な訪問者における,米国入国後の結核に関連する罹患率,死亡率,費用を推定した.現行策の合法的移民に対する X 線スクリーニング検査と現在の結核対策プログラムのみを行った場合,X 線検査に加えて米国の資金援助によりメキシコで直接監視下短期化学療法(directly observed treatment, short course;DOTS)を拡大した場合,または X 線検査に加えメキシコからの合法的移民に対するスクリーニング検査としてツベルクリン反応検査を行った場合を評価した.また,上記 3 つの戦略を用いて,ハイチとドミニカ共和国からの移住者でも結核に関連する転帰を調査した.
米国が 3,490 万ドルを負担してメキシコで DOTS プログラムを拡大すると,現行策に比較して,20 年間で米国の結核患者が 2,591 例減少し,結核による死亡は 349 例減少して,正味 1 億 800 万ドル節減できることになる.メキシコからの合法的移民に対する X 線検査にツベルクリン反応検査を加えると,米国の結核患者が 401 例減少するが,3 億 2900 万ドルの追加費用がかかることになる.DOTS プログラムを拡大すれば,たとえ初期投資が 2 倍になったり,米国がメキシコにおける結核治療薬の費用すべてを負担したり,メキシコでの結核発生率の低下が予測よりも少なかったりした場合でも,費用は変らず節減できることになる.ハイチとドミニカ共和国における DOTS プログラムの拡大のために 940 万ドルを投資することで,米国では 20 年間で正味 2,000 万ドル節減できることになる.
メキシコ,ハイチ,ドミニカ共和国で DOTS プログラムを拡大するために米国が資金を提供することで,米国への移住者における結核に関連した罹患率と死亡率が低下し,米国に正味の費用節減がもたらされると考えられる.