November 30, 2006 Vol. 355 No. 22
急性心筋梗塞における来院からバルーン処置までの時間を短縮するための方策
Strategies for Reducing the Door-to-Balloon Time in Acute Myocardial Infarction
E.H. Bradley and Others
ST 上昇型心筋梗塞患者において,迅速な再灌流療法はきわめて重要である.ガイドラインでは,初回経皮的冠動脈インターベンションにおいて,病院到着から冠動脈バルーン拡張までの時間(door-to-balloon time;来院からバルーン処置までの時間)は 90 分以内にすべきであると勧告している.しかし,この目標を満たす病院はほとんどない.来院からバルーン処置までの時間の短縮と有意に関連している病院の方策を明らかにすることを試みた.
365ヵ所の病院で調査を行い,28 の具体的な方策について,それぞれ実施しているかどうか確認した.病院の方策と来院からバルーン処置までの時間との関連を検討するために,階層一般化線形モデルと,メディケア・メディケイドサービスセンター(Centers for Medicare and Medicaid Services)の患者データを用いた.
多変量解析で,6 つの方策が,来院からバルーン処置までの時間の短縮と有意に関連していることが示された.これらの方策は,救急医がカテーテル検査室を稼動態勢にする(来院からバルーン処置までの時間の短縮の平均,8.2 分),中央オペレータへの 1 回の連絡で検査室を稼動態勢にする(13.8 分),患者を病院へ搬送中に救急部がカテーテル検査室を稼動態勢にする(15.4 分),呼び出し後 20 分以内にカテーテル検査室へ到着するよう職員に要請する(30 分を超える場合との比較で)(19.3 分),心臓専門医を救急部に常駐させる(14.6 分),救急部とカテーテル検査室の職員にリアルタイムでデータをフィードバックさせる(8.6 分)というものであった.このような方策は有効であるにもかかわらず,調査した病院のうち,これらを実施している病院はごくわずかであった.
ST 上昇型心筋梗塞の管理において,特定の病院の方策の中には,来院からバルーン処置までの時間の短縮と有意に関連しているものもある.
本論文は,2006 年 11 月 13 日 www.nejm.org で発表された.