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July 20, 2006 Vol. 355 No. 3

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駆出率が保持されている心不全の有病率と転帰の動向
Trends in Prevalence and Outcome of Heart Failure with Preserved Ejection Fraction

T.E. Owan and Others

背景

駆出率が保持されている心不全の有病率は,集団の人口統計学的特性,および心不全に対する危険因子の保有率と治療法に変化がみられた結果,変化している可能性がある.駆出率が保持されている心不全の有病率の変化は,心不全の自然経過を変える可能性がある.駆出率が保持されている心不全の有病率の長期的動向を明らかにするため,単一施設の患者を対象に 15 年間にわたる研究を行った.

方 法

1987~2001 年に,ミネソタ州オルムステッド郡のメイヨ・クリニック(Mayo Clinic)病院に非代償性心不全のため入院した連続症例をすべて調査した.患者を,駆出率が保持されている患者と低下している患者に分類した.また,地域患者(オルムステッド郡の住民)か,紹介患者かでも分類した.心不全の種類,関連する心血管疾患,生存率の長期的動向を明らかにした.

結 果

15 年間で心不全患者計 6,076 例が退院した.これらの患者のうち,4,596 例(76%)で駆出率のデータが得られた.そのうち 53%では駆出率が低下しており,47%では駆出率が保持されていた.駆出率が保持されている心不全と診断された患者の割合は,時間と共に上昇し,また,地域患者のほうが紹介患者よりも有意に高かった(55% 対 45%).心不全患者の高血圧,心房細動,糖尿病の有病率は,時間と共に有意に上昇した.生存率は,駆出率が保持されている患者のほうがわずかに高かった(死亡の調整ハザード比 0.96,P=0.01).生存率は,駆出率が低下した患者では時間と共に改善したが,駆出率が保持されている患者では改善しなかった.

結 論

駆出率が保持されている心不全の有病率は 15 年間で上昇したが,心不全による死亡率に変化はみられなかった.このような傾向は,ますます拡大するこの公衆衛生上の問題の重大さを強調している.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2006; 355 : 251 - 9. )