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December 14, 2006 Vol. 355 No. 24

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大腸内視鏡スクリーニングにおける内視鏡の引き戻し時間と腺腫の検出
Colonoscopic Withdrawal Times and Adenoma Detection during Screening Colonoscopy

R.L. Barclay and Others

背景

大腸内視鏡検査は,新生物のスクリーニングに一般的に用いられる.日常診療における大腸内視鏡スクリーニングの精度を評価するため,大規模な地域ベースの診療を対象に,内視鏡専門医による腺腫の検出率と,大腸内視鏡の引き戻しに要する時間について調査を行った.

方 法

15 ヵ月間に,経験豊富な内視鏡専門医 12 人が 7,882 回の大腸内視鏡検査を実施した.そのうち 2,053 回は,過去に大腸内視鏡検査を受けたことがない被験者に対するスクリーニング検査であった.手技中の大腸内視鏡の挿入時間と引き戻し時間に加え,スクリーニング検査中に検出した腫瘍性病変の数,大きさ,組織学的所見を記録した.大腸内視鏡の引き戻し時間の平均が 6 分未満の専門医における腫瘍性病変の検出率を,引き戻し時間の平均が 6 分以上の専門医の検出率と比較した.専門家によると,6 分は,内視鏡の引き戻し中に十分な観察を行うために必要な最低限の時間である.

結 果

スクリーニング検査を受けた被験者の 23.5%で,腫瘍性病変(大半は腺腫性ポリープ)が検出された.腺腫検出率(スクリーニング検査を受けた被験者 1 人当りの平均病変数の範囲 0.10~1.05 個,腺腫が認められた被験者の割合の範囲 9.4~32.7%)および盲腸から肛門までの大腸内視鏡の引き戻し時間(ポリープ除去を行わない手技で 3.1~16.8 分)に,専門医間で大きな差があった.引き戻し時間の平均が 6 分以上の専門医では,引き戻し時間の平均が 6 分未満の専門医と比べて,なんらかの腫瘍の検出率(28.3% 対 11.8%,P<0.001)および進行腫瘍の検出率(6.4% 対 2.6%,P=0.005)が高かった.

結 論

大規模な地域ベースの消化器科診療では,大腸内視鏡の引き戻し時間の平均が長いほど,内視鏡専門医による腺腫検出率が高くなることが認められた.広く行われている大腸内視鏡スクリーニングにおいて,引き戻し時間の長さの違いが病変検出と大腸癌の予防に与える影響は不明である.われわれの調査は予備的研究であるため,一般化可能性と臨床診療における意義について,今後の研究で解明する必要がある.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2006; 355 : 2533 - 41. )