December 21, 2006 Vol. 355 No. 25
最初の主要心血管イベントと死亡の予測に対する複数のバイオマーカー
Multiple Biomarkers for the Prediction of First Major Cardiovascular Events and Death
T.J. Wang and Others
心血管イベントのリスクの予測に用いられる生物学的経路の異なるバイオマーカーは複数存在するが,その付加的有用性を評価した研究はほとんどない.
フラミンガム心臓研究(Framingham Heart Study)で定期検査を受けている被験者 3,209 例において,以下の 10 種類のバイオマーカーを測定した:C 反応性蛋白,B 型ナトリウム利尿ペプチド,N 末端前心房性ナトリウム利尿ペプチド,アルドステロン,レニン,フィブリノゲン,D ダイマー,プラスミノーゲン活性化阻害因子 1,ホモシステインの濃度,および尿中アルブミン/クレアチニン比.
追跡調査期間(中央値 7.4 年)中に,被験者の 207 例が死亡し,169 例が最初の主要心血管イベントを発症した.従来の危険因子で補正した Cox 比例ハザードモデルでは,以下のバイオマーカーが死亡リスクをもっとも強く予測した(各バイオマーカーに続く数値は,対数標準偏差が 1 増加するごとの補正ハザード比):B 型ナトリウム利尿ペプチド濃度(1.40),C 反応性蛋白濃度(1.39),尿中アルブミン/クレアチニン比(1.22),ホモシステイン濃度(1.20),レニン濃度(1.17).主要心血管イベントをもっとも強く予測したバイオマーカーは,B 型ナトリウム利尿ペプチド濃度(対数標準偏差が 1 増加するごとの補正ハザード比 1.25)と尿中アルブミン/クレアチニン比(1.20)であった.「マルチマーカー」得点(有意なバイオマーカーの回帰係数に基づく)が最高五分位群の被験者は,得点が最低五分位の 2 群の被験者と比べて,死亡(補正ハザード比 4.08,P<0.001)と主要心血管イベント(補正ハザード比 1.84,P=0.02)のリスクが上昇していた.しかし,C 統計量で測定したところ,マルチマーカー得点を従来の危険因子に追加しても,リスクの分類能はほとんど上昇しなかった.
個々の被験者のリスクを評価するうえで,今回検討した 10 種類の最新のバイオマーカーを使用しても,標準的な危険因子を多少補足するにとどまる.