December 21, 2006 Vol. 355 No. 25
軽度認知機能障害における PET による脳アミロイドとタウ蛋白の検出
PET of Brain Amyloid and Tau in Mild Cognitive Impairment
G.W. Small and Others
アミロイド蛋白の蓄積による老人斑とタウ蛋白による神経原線維変化は,アルツハイマー病の神経病理学的特徴であり,アルツハイマー病のリスクを有する軽度認知機能障害患者の大脳皮質領域に蓄積する.これらの異常蛋白の検出を目的とした非侵襲的方法は,創薬や診断法に向けた代理指標を開発するうえで有用である可能性がある.
記憶障害があると自己報告し,神経学的・精神医学的評価ならびに陽電子放射断層撮影(PET)を受けたボランティア 83 人を登録した.認知機能検査に基づき,25 人をアルツハイマー病,28 人を軽度認知機能障害,30 人を認知機能障害なし(健常対照者)と分類した.PET は,in vitro で老人斑や神経原線維変化に結合する分子である 2-(1-{6-[(2-[F-18] fluoroethyl)(methyl)amino]-2-naphthyl}ethylidene)malononitrile(FDDNP)の注入後に実施した.また,全被験者に対して,2-deoxy-2-[F-18]fluoro-D-glucose(FDG)PET を実施し,72 人には磁気共鳴画像法(MRI)を実施した.
全体の FDDNP-PET 結合値(側頭部,頭頂部,後部帯状回,前頭部に対する値の平均値)は,対照群では軽度認知機能障害群よりも低く(P<0.001),軽度認知機能障害群ではアルツハイマー病群よりも低かった(P<0.001).FDDNP-PET 結合は,FDG-PET での代謝や MRI での容量に比べて,診断群の識別に優れていた.
FDDNP-PET スキャンによって,軽度認知機能障害患者をアルツハイマー病患者や認知機能障害のない人から識別することができる.この手法は,アミロイド蛋白による老人斑やタウ蛋白による神経原線維変化の,大脳内での分布パターンを決定するための非侵襲的方法として,有用である可能性がある.