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August 17, 2006 Vol. 355 No. 7

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救急部の患者におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染
Methicillin-Resistant S. aureus Infections among Patients in the Emergency Department

G.J. Moran and Others

背景

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は,MRSA の確立された危険因子がない地域の人びとのあいだで起る感染の中で,確認される数がますますふえてきている.

方 法

2004 年 8 月に 11 の大学附属病院の救急部で診察を受けた,急性化膿性皮膚・軟部組織感染の成人患者を登録した.培養を行い,臨床情報を収集した.入手した 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)分離株を,抗菌薬感受性検査,パルスフィールドゲル電気泳動,毒素遺伝子の検出を行って解析した.MRSA 分離株に対しては,メチシリン耐性をコードする mecA 遺伝子をもつ遺伝要素である,ブドウ球菌カセット染色体 mec(SCCmec)のタイピングを行った.

結 果

皮膚・軟部組織感染患者 422 例中,320 例(76%)で S. aureus が分離された.MRSA の保有率は,全体では 59%で,範囲は 15~74%であった.パルスフィールド USA300 分離株が MRSA 分離株の 97%を占め,うち 74%は単一株(USA300-0114)であった.SCCmec IV 型と Panton-Valentine ロイコシジン毒素遺伝子が,MRSA 分離株の 98%で検出された.その他の毒素遺伝子はほとんど検出されなかった.MRSA 分離株のうち,95%がクリンダマイシンに感受性を示し,6%がエリスロマイシン,60%がフルオロキノロン,100%がリファンピンとトリメトプリム・スルファメトキサゾール,92%がテトラサイクリンに感受性を示した.抗菌薬治療は,抗菌薬の投与を受けた MRSA 感染 175 例中 100 例(57%)で,感受性検査の結果と一致しなかった.メチシリン感受性の S. aureus 分離株のうち,31%は USA300 で,42%は pvl 遺伝子を保有していた.

結 論

MRSA は,米国の 11 の都市にある救急部で診察を受ける患者の皮膚・軟部組織感染において,特定できる原因としてもっとも多い.抗菌薬治療が皮膚・軟部組織感染の治療に適応である場合,医師は,MRSA 対策として,培養を実施し経験的治療に変更を加えることを検討すべきである.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2006; 355 : 666 - 74. )