尿素サイクル異常症に対するフェニル酢酸と安息香酸による治療後の生存
Survival after Treatment with Phenylacetate and Benzoate for Urea-Cycle Disorders
G.M. Enns and Others
フェニル酢酸ナトリウムと安息香酸ナトリウムを静脈内投与する治療法は,これまで致死的であった尿素サイクル酵素欠損症を有する患者の小規模集団において,血漿アンモニア濃度を低下させ,生存率を改善することが示されている.
尿素サイクル異常症 299 例,1,181 件の急性高アンモニア血症エピソードを対象に,フェニル酢酸ナトリウムと安息香酸ナトリウムを用いた治療(Ammonul,Ucyclyd Pharma 社)について対照群を設定せずに検討した,25 年間の非盲検試験の結果を報告する.
全生存率は 84%(299 例中 250 例)であった.高アンモニア血症エピソード後の生存率は 96%であった(1,181 件中 1,132 件).生後 30 日を超える患児は,新生児に比べエピソード後も生存する確率が高かった(98% 対 73%,P<0.001).12 歳以上の患者 93 例では,437 件のエピソードがあったが,12 歳未満の全患児よりもエピソード後に生存する確率が高かった(99%,P<0.001).入院時に昏睡状態であった患者の 81%が生存した.ピークのアンモニア濃度が 1,000 μmol/L(1,804 μg/dL)を超える生後 30 日未満の患児では,高アンモニア血症エピソード後に生存する確率がもっとも低かった(38%,P<0.001).また,新生児 56 例ではエピソードの 60%で,生後 30 日以上の患児 80 例ではエピソードの 7%で透析が行われた.
尿素サイクル異常症に対しては,速やかに認識し,フェニル酢酸ナトリウムと安息香酸ナトリウムの投与を,塩酸アルギニンの静脈内投与や異化を防ぐための適切なカロリー投与といった他の治療と併用することで,血漿アンモニア濃度を効果的に低下させ,大部分の患者が生存することができる.また,とくにフェニル酢酸ナトリウムと安息香酸ナトリウムの静脈内投与に反応しない新生児やより年齢が上の患者では,高アンモニア血症を管理するために血液透析が必要となる場合もある.