October 4, 2007 Vol. 357 No. 14
アルツハイマー病の興奮症状の治療におけるドネペジル
Donepezil for the Treatment of Agitation in Alzheimer's Disease
R.J. Howard and Others
興奮は,アルツハイマー病患者に多くみられる苦痛を伴う症状である.コリンエステラーゼ阻害薬はアルツハイマー病患者の認知転帰を改善するが,行動異常に対する利益は明らかにされていない.
臨床的に意義のある興奮症状が認められ,短期的な心理社会的治療プログラムが奏効しなかったアルツハイマー病患者 272 例を,ドネペジル 10 mg/日(128 例)またはプラセボ(131 例)を 12 週間投与する群に無作為に割り付けた.主要転帰は,12 週目におけるコーエン・マンスフィールド agitation 評価(Cohen-Mansfield Agitation Inventory;CMAI,29~203 点から成る評価尺度で高スコアほど強い興奮状態を示す)スコアの変化とした.
ベースラインから 12 週目までの CMAI スコアの変化に基づいたドネペジルとプラセボの効果のあいだに有意差は認められなかった(変化の差の推定平均値 [ドネペジル群の値からプラセボ群の値を減じた値] -0.06,95%信頼区間 [CI] -4.35~4.22).プラセボ群 108 例中 22 例(20.4%)とドネペジル群 113 例中 22 例(19.5%)に,CMAI スコアの 30%以上の低下が認められた(ドネペジル群の値からプラセボ群の値を減じた値 -0.9 パーセントポイント,95% CI -11.4~9.6).神経精神症状評価(Neuropsychiatric Inventory),神経精神症状評価に対応した介護負担尺度(Neuropsychiatric Inventory Caregiver Distress Scale),臨床全般印象評価(Clinicianユs Global Impression of Change)のいずれのスコアにおいても,プラセボ群とドネペジル群のあいだに有意差は認められなかった.
この 12 週間の試験では,アルツハイマー病患者の興奮症状の治療において,ドネペジルはプラセボより高い効果を示さなかった.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00142324)