November 22, 2007 Vol. 357 No. 21
嚢胞線維症の小児に対する肺移植と生存率
Lung Transplantation and Survival in Children with Cystic Fibrosis
T.G. Liou and Others
嚢胞線維症の小児に対する肺移植が,生存率と QOL に与える影響は明らかにされていない.
米国嚢胞線維症財団患者登録(U.S. Cystic Fibrosis Foundation Patient Registry)および米国臓器移植ネットワーク(Organ Procurement and Transplantation Network)のデータを用いて,1992~2002 年の期間に肺移植の待機リストに載っていた嚢胞線維症の小児を同定した.待機リストに児が載る以前に利用可能であった臨床的に関連のある複数の共変量,およびこれら共変量と時間依存型共変量としての肺移植との相互作用を用いて,比例ハザードモデルを実施した.データは,後ろ向きの QOL 解析のためには,質と量が不十分であった.
待機リストに載っていた患児 514 例中,計 248 例が 1992~2002 年の期間に米国で肺移植を受けた.比例ハザードモデルから,生存率の変化に関連する変量が,移植のほかに 4 つ同定された.Burkholderia cepacia 感染は,患児が移植を受けたかどうかにかかわらず,生存率の低下傾向と関連した.待機リストに登録前になされた糖尿病の診断は,登録されているあいだの生存率を低下させたが,移植後の生存率は低下させなかった.一方,より年長であることは,登録されているあいだの生存率には影響しなかったが,移植後の生存率を低下させた.Staphylococcus aureus 感染は,登録されているあいだの生存率を上昇させたが,移植後の生存率を低下させた.年齢,糖尿病の有無,S. aureus 感染状態を共変量として用い,移植が各患児群の生存率に与える影響を評価した.ハザードファクターとして表した数値は,利益に対して 1 未満であり,害のリスクに対して 1 を超えた.肺移植に伴う有意な推定利益が認められたのは 5 例で,283 例には有意な害のリスク,102 例には有意ではない利益,124 例には有意ではない害のリスクが認められた.
今回の解析では,肺移植の待機リストに載っていた患児 514 例中,明らかな生存率の改善が認められたのは 5 例のみであった.肺移植による生存期間の延長は,嚢胞線維症の患児では期待すべきではない.患児が肺移植により生存や QOL に関して利益を得られるのか,またいつ得ることができるのかを明らかにするためには,前向き無作為化試験が必要である.