August 16, 2007 Vol. 357 No. 7
抜去した人工股関節および人工膝関節の超音波処理による感染症診断
Sonication of Removed Hip and Knee Prostheses for Diagnosis of Infection A. Trampuz and others
A. Trampuz and Others
人工関節周囲の組織標本の培養は,人工関節感染症の微生物学的診断に用いられる標準的な方法であるが,感度と特異度に欠ける.人工関節感染症では,微生物は一般に人工関節表面のバイオフィルムに認められる.われわれは,人工関節から得られる標本の培養により,人工関節感染症の微生物学的診断を改善できるという仮説を立てた.
股関節または膝関節の人工関節再置換術あるいは切除関節形成術を施行した患者における人工関節感染症の微生物学的診断に関して,人工関節の付着菌を取り除くために抜去した人工股関節または人工膝関節に,超音波処理を施して得られる標本を培養する方法と,従来の人工関節周囲組織を培養する方法とを比較する前向き研究を実施した.
人工膝関節全置換術(207 例)と人工股関節全置換術(124 例)を施行した患者 331 例を検討対象とした.うち 252 例で感染を伴わない不具合を認め,79 例で人工関節感染症を認めた.人工関節感染症を定義するための標準化した非微生物学的基準を用いると,人工関節周囲組織の培養と超音波処理液の培養の感度は,それぞれ 60.8%,78.5%(P<0.001)であり,特異度は 99.2%,98.8%であった.14 例の人工関節感染症が超音波処理液の培養で確認されたが,人工関節周囲組織の培養では確認されなかった.また,術前 14 日以内に抗菌薬治療を受けた患者では,人工関節周囲組織の培養と超音波処理液の培養の感度は,それぞれ 45.0%,75.0%(P<0.001)であった.
この研究では,人工股関節および人工膝関節感染症の微生物学的診断において,超音波処理により得られた人工関節の標本を培養する方法は,人工関節周囲組織を培養する従来の方法よりも感度が高く,とくに術前 14 日以内に抗菌薬を投与された患者で顕著に認められた.