September 6, 2007 Vol. 357 No. 10
重症患者におけるエポエチンαの有効性と安全性
Efficacy and Safety of Epoetin Alfa in Critically Ill Patients
H.L. Corwin and Others
貧血は重症患者によくみられ,赤血球輸血による治療が行われることが多いが,赤血球輸血は転帰不良と関連する.われわれは,遺伝子組換えヒトエリスロポエチン(エポエチンα)による治療が,赤血球輸血の必要性を低減するという仮説を立てた.
この前向き無作為化プラセボ対照試験では,集中治療室への入院後 48~96 時間が経過した内科患者,外科患者,外傷患者 1,460 例を登録した.最長 3 週間にわたり,エポエチンα(40,000 U)またはプラセボを週 1 回投与し,患者を 140 日間追跡調査した.主要エンドポイントは,赤血球輸血を受けた患者の割合とした.副次的エンドポイントは,輸血された赤血球の単位数,死亡率,ベースラインからのヘモグロビン濃度の変化とした.
エポエチンα療法では,プラセボと比較して,赤血球輸血を受けた患者数(エポエチンα群 対 プラセボ群の相対リスク 0.95,95%信頼区間 [CI] 0.85~1.06),および輸血された赤血球単位数の平均値(±SD)(エポエチンα群 4.5±4.6 単位,プラセボ群 4.3±4.8 単位;P=0.42)のいずれも減少しなかった.しかし,29 日目のヘモグロビン濃度の上昇は,エポエチンα群のほうがプラセボ群よりも大きかった(1.6±2.0 g/dL 対 1.2±1.8 g/dL,P<0.001).29 日目の死亡率は,エポエチンα群のほうが低い傾向にあり(補正ハザード比 0.79,95% CI 0.56~1.10),この効果は,外傷の診断を受けた患者で事前に規定された解析でも認められた(補正ハザード比 0.37,95% CI 0.19~0.72).同様のパターンが,140 日目に(補正ハザード比 0.86,95% CI 0.65~1.13),とくに外傷患者で認められた(補正ハザード比 0.40,95% CI 0.23~0.69).プラセボと比較して,エポエチンαは血栓イベントの発生率の有意な上昇と関連した(ハザード比 1.41,95% CI 1.06~1.86).
エポエチンαの使用により,重症患者における赤血球輸血の発生率が低下することはないが,外傷患者の死亡率は低下する可能性がある.また,エポエチンα療法は,血栓イベントの発生率の上昇と関連している.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00091910)