March 20, 2008 Vol. 358 No. 12
コレステロールに関連する遺伝子多型と心血管イベントのリスク
Polymorphisms Associated with Cholesterol and Risk of Cardiovascular Events
S. Kathiresan and Others
血中低比重リポ蛋白(LDL)または高比重リポ蛋白(HDL)コレステロールに関連する,頻度の高い一塩基多型(SNP)は,脂質濃度に弱い影響を及ぼす.われわれは,このような SNP の組合せが,心血管疾患リスクに寄与するという仮説を検証した.
マルメ食事と癌に関する研究(Malmo Diet and Cancer Study)の心血管コホートの 5,414 例について,9 つの遺伝子座で SNP を調査した.最初に,SNP と LDL,HDL コレステロールとの関連の妥当性を検証し,次に,好ましくない対立遺伝子数に基づく遺伝子型スコアを作成した.Cox 比例ハザードモデルを用いて,遺伝子型スコアとの関連における最初の心血管イベントまでの時間を検討した.
9 つの SNP すべてに,LDL,HDL コレステロールいずれかの濃度との関連について再現性が認められた.遺伝子型スコアの増加に伴い,LDL コレステロール濃度は 152 mg/dL から 171 mg/dL(3.9 mmol/L から 4.4 mmol/L)へと上昇し,HDL コレステロールは 60 mg/dL から 51 mg/dL(1.6 mmol/L から 1.3 mmol/L)へと低下した.追跡調査期間(中央値 10.6 年)中に,238 例で初回の心血管イベントが生じた.遺伝子型スコアは,ベースラインの脂質濃度などの共変量で補正したモデルにおいて,心血管疾患の発症と関連していた(P<0.001).C 統計量による評価では,遺伝子型スコアの使用によって臨床的なリスクの予測は改善されなかった.しかし,遺伝子型スコアを含むモデルを使用することにより,遺伝子型スコアを含まないモデルと比較して,リスクの分類に有意な改善がみられた.
LDL または HDL コレステロール濃度の調節に関与する,妥当性の検証されている 9 つの SNP の遺伝子型スコアは,心血管疾患の発症に対する独立の危険因子であった.同スコアでは,リスクの判別は改善されなかったが,個々の被験者における臨床的なリスクの再分類には,標準的な臨床的因子を上回る若干の改善がみられた.