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May 1, 2008 Vol. 358 No. 18

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細胞遺伝学的に正常な急性骨髄性白血病における変異と治療転帰
Mutations and Treatment Outcome in Cytogenetically Normal Acute Myeloid Leukemia

R.F. Schlenk and Others

背景

細胞遺伝学的に正常な急性骨髄性白血病(AML)細胞にも変異の生じる遺伝子がいくつかあり,ヌクレオフォスミン遺伝子(NPM1),fms 様チロシンキナーゼ 3 遺伝子(FLT3),CCAAT/エンハンサー結合蛋白 α 遺伝子(CEPBA),骨髄性リンパ性白血病または混合系統白血病の遺伝子(MLL),神経芽細胞腫 RAS ウイルス性癌遺伝子相同体(NRAS)などがある.われわれは,AML 患者においてこれらの変異と臨床転帰との関連を評価した.

方 法

細胞遺伝学的に正常な AML を有する 60 歳未満の成人患者 872 例を対象に,白血病細胞内の遺伝子 NPM1,FLT3,CEBPA,MLL,NRAS の変異状態と臨床転帰を比較した.患者は AML 治療に関する 4 件の試験のうち 1 件に登録されていた.各試験において,HLA 適合の血縁ドナーがいる患者は幹細胞移植に割り付けられた.

結 果

計 53%の患者に NPM1 変異があり,31%に FLT3 遺伝子内縦列重複(internal tandem duplication;ITD),11%に FLT3 チロシンキナーゼ領域変異,13%に CEBPA 変異,7%に MLL 部分縦列重複(partial tandem duplication;PTD),13%に NRAS 変異が認められた.全体の完全寛解率は 77%であった.FLT3-ITD のない変異 NPM1 遺伝子型,変異 CEBPA 遺伝子型,年齢がより低いことは,それぞれ完全寛解と有意に関連していた.寛解後に治療を受けた 663 例のうち,150 例が HLA 適合の血縁ドナーから造血幹細胞移植を受けた.完全寛解中の再発リスクまたは死亡リスクと,FLT3-ITD のない変異 NPM1 白血病遺伝子型(ハザード比 0.44,95%信頼区間 [CI] 0.32~0.61),変異 CEBPA 遺伝子型(ハザード比 0.48,95% CI 0.30~0.75),MLL-PTD 遺伝子型(ハザード比 1.56,95% CI 1.00~2.43)とのあいだ,および HLA 適合血縁ドナーからの移植(ハザード比 0.60,95% CI 0.44~0.82)とのあいだに,有意な関連が認められた.移植による利益は,予後不良の遺伝子型である FLT3-ITD を有する患者のサブグループ,または FLT3-ITD がなく野生型 NPM1 CEBPA から成る遺伝子型の患者のサブグループに限定された.

結 論

NPM1,FLT3,CEBPA,MLL の変異状態により定義される遺伝子型は,細胞遺伝学的に正常な AML を有する患者の治療転帰に関連している.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2008; 358 : 1909 - 18. )