September 4, 2008 Vol. 359 No. 10
肝移植待機リスト登録患者における低ナトリウム血症と死亡率
Hyponatremia and Mortality among Patients on the Liver-Transplant Waiting List
W.R. Kim and Others
肝移植に関する現行の方針では,死亡リスクがもっとも高い患者に臓器が提供されている.
2005 年と 2006 年に米国臓器移植ネットワーク(Organ Procurement and Transplantation Network)に登録された,初回肝移植の成人候補者全員から得られたデータを用いて,登録後 90 日の死亡率を予測する多変量生存モデルを作成し,その妥当性を検証した.予測変数は,血清ナトリウム濃度を加えた末期肝疾患モデル(Model for End-Stage Liver Disease:MELD)スコアと,加えない MELD スコアであった.MELD スコア(6~40 点で,スコアが高いほど疾患が重度であることを示す)は,血清ビリルビン濃度,血清クレアチニン濃度,国際標準比プロトロンビン時間に基づいて算出した.
2005 年の待機リスト登録者数は 6,769 例であり,そのうち 1,781 例が肝移植を受け,422 例が登録後 90 日以内に死亡した.MELD スコアと血清ナトリウム濃度は,ともに死亡率と有意に関連していた(死亡のハザード比は MELD 1 点あたり 1.21,血清ナトリウム濃度 125~140 mmol/L における 1 単位の減少あたり 1.05,両変数について P<0.001).さらに,MELD スコアと血清ナトリウム濃度のあいだには有意な相互作用があり,MELD スコアの低い患者では血清ナトリウム濃度の影響がより大きいことが示された.MELD スコアと血清ナトリウム濃度の組合せを,2006 年のデータ(477 例が待機リストへの登録後 3 ヵ月以内に死亡)に当てはめると,死亡した 477 例中 32 例(7%)では,組み合わせたスコアのほうが MELD スコア単独よりも大幅に高くなった.したがって,血清ナトリウム濃度と組み合わせた MELD スコアで優先順位を割り当てていれば,移植が行われ,死亡を防ぐことができた可能性がある.
集団全体を対象とした今回の研究により,肝移植候補者においては,MELD スコアと血清ナトリウム濃度が生存の重要な予測因子であることが示された.