October 9, 2008 Vol. 359 No. 15
母体へのインフルエンザワクチン接種が母親と乳児に与える有効性
Effectiveness of Maternal Influenza Immunization in Mothers and Infants
K. Zaman and Others
乳児と妊娠女性は,インフルエンザ感染により重大な帰結にいたるリスクが高い.不活化インフルエンザワクチンの接種は妊娠女性には推奨されているが,6 ヵ月未満の乳児には認められていない.バングラデシュにおいて,妊娠中に接種した不活化インフルエンザワクチンの臨床効果について検討した.
この無作為化試験では,母親 340 例を不活化ワクチン接種群(インフルエンザワクチン群)と,23 価肺炎球菌多糖類ワクチン接種群(対照群)のいずれかに割り付けた.発症を評価するために,生後 24 週まで母親に週 1 回の面接調査を行った.熱性呼吸器疾患を有する被験者には臨床評価を行い,体調不良の乳児にはインフルエンザ抗原検査を行った.疾患の発生数,発生率比,ワクチンの有効性を推定した.
2004 年 8 月~2005 年 12 月のあいだに母親と乳児を観察した.臨床検査で確定診断されたインフルエンザの症例数は,インフルエンザワクチンの接種を受けた母親の乳児のほうが対照群の乳児より少なく(6 例,16 例),ワクチンの有効性は 63%であった(95%信頼区間 [CI] 5~85).発熱を伴う呼吸器疾患は,インフルエンザワクチン群の乳児 110 例,対照群の乳児 153 例で発症し,ワクチンの有効性は 29%であった(95% CI 7~46).母親では,発熱を伴う呼吸器疾患の発症率が 36%減少した(95% CI 4~57).
不活化インフルエンザワクチンにより,確定診断されるインフルエンザの発生数は生後 6 ヵ月以下の乳児で 63%減少した.また,母親と乳児で,熱性呼吸器疾患全体の約 1/3 を予防することができた.母体へのインフルエンザワクチン接種は,母親と乳児の双方に大きな利益をもたらす戦略である.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00142389)
本論文(10.1056/NEJMoa0708630)は,2008 年 9 月 17 日に www.nejm.org で発表された.