October 9, 2008 Vol. 359 No. 15
2 型糖尿病における強化血糖コントロールに関する 10 年間の追跡調査
10-Year Follow-up of Intensive Glucose Control in Type 2 Diabetes
R.R. Holman and Others
英国糖尿病前向き研究(United Kingdom Prospective Diabetes Study:UKPDS)において強化血糖コントロール療法を受けた 2 型糖尿病患者は,従来の食事療法を受けた患者と比べて,細小血管合併症のリスクが低かった.われわれは試験後モニタリングを実施し,この血糖コントロールの改善が持続するのかどうか,またこのような治療が大血管に関する転帰に長期的な影響を与えるのかどうかを検討した.
新たに 2 型糖尿病と診断された患者 5,102 例のうち,4,209 例を,血糖コントロールについて従来の治療法(食事制限)を行う群と,強化療法(スルホニル尿素またはインスリン,過体重患者においてはメトホルミン)を行う群のいずれかに無作為に割り付けた.試験後モニタリングでは,患者 3,277 例に,最初の 5 年間は UKPDS を受けた病院を毎年受診するよう依頼したが,割り付けられたレジメンでの治療継続は試みなかった.受診できなかった患者の追跡には年 1 回の質問票調査を行い,6~10 年目はすべての患者を質問票で評価した.事前に規定した 7 つの複合臨床エンドポイントを,以前の割付け区分に従って,intention-to-treat に基づいて検討した.
糖化ヘモグロビン値における群間差は,1 年目以降は消失した.スルホニル尿素・インスリン群では,糖尿病関連のすべてのエンドポイント(9%,P=0.04)と細小血管障害(24%,P=0.001)の相対リスクの減少は 10 年の時点で持続しており,心筋梗塞(15%,P=0.01)と全死因死亡(13%,P=0.007)のリスク低下が,イベントの発生数が増加するに従って経時的に認められた.メトホルミン群では,糖尿病関連のすべてのエンドポイント(21%,P=0.01),心筋梗塞(33%,P=0.005),全死因死亡(27%,P=0.002)のリスクについて,有意な低下が持続していた.
血糖値の差は早期に消失するにもかかわらず,細小血管リスクの低下は持続し,心筋梗塞や全死因死亡のリスクが新たに低下することが,試験後 10 年間の追跡調査で観察された.過体重患者では,メトホルミン治療による利益の継続が認められた.(UKPDS 80,Current Controlled Trials 番号:ISRCTN75451837)
本論文(10.1056/NEJMoa0806470)は,2008 年 9 月 10 日に www.nejm.org で発表された.