November 13, 2008 Vol. 359 No. 20
重度の強迫性障害に対する視床下核刺激
Subthalamic Nucleus Stimulation in Severe Obsessive–Compulsive Disorder
L. Mallet and Others
重度の難治性強迫性障害(obsessive–compulsive disorder:OCD)は,日常生活に支障をきたす障害である.その治療選択肢の一つとして,運動障害の治療法としてすでに有用性が実証されている視床下核刺激が提案されている.
視床下核刺激の有効性と安全性を評価する,10 ヵ月間のクロスオーバー二重盲検多施設共同試験を実施した.重度の難治性 OCD 患者 8 例を,視床下核に実刺激を行ったあとに偽刺激を行う群に,別の 8 例を,偽刺激を行ったあとに実刺激を行う群に無作為に割り付けた.主要転帰は,各 3 ヵ月の 2 回の治療期間の終了時における,Yale–Brown 強迫観念・強迫行為尺度(Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale:Y-BOCS)で評価した OCD の重症度とした.全般的な精神病理学的所見,機能,忍容性を,標準的な精神医学評価尺度,機能の全体的評定(Global Assessment of Functioning:GAF)尺度,神経心理学的検査により評価した.
視床下核への実刺激後,Y-BOCS スコア(0~40 で,スコアが低いほど症状の重症度が低いことを示す)は偽刺激後と比較して有意に低く(平均スコア [±SD] 19±8 対 28±7,P=0.01),GAF スコア(1~90 で,スコアが高いほど機能レベルが高いことを示す)は有意に高かった(56±14 対 43±8,P=0.005).神経心理学的検査項目,抑うつ,不安の評価において,刺激による変化はみられなかった.全体で,脳内出血 1 件と感染症 2 件を含む,15 件の重篤な有害事象が発生した.重篤でない有害事象も 23 件発生した.
この予備的結果から,視床下核刺激により重度の OCD の症状が緩和される可能性が示された.しかし,治療に関連した重篤な有害事象のリスクがかなり高くなることも示された.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00169377)