December 11, 2008 Vol. 359 No. 24
生後 5~17 ヵ月の小児におけるマラリアワクチン RTS,S/AS01E の有効性
Efficacy of RTS,S/AS01E Vaccine against Malaria in Children 5 to 17 Months of Age
P. Bejon and Others
熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)マラリアは,緊急の対処を要する世界規模の健康問題である.スポロゾイト周囲蛋白を標的とするマラリアワクチン RTS,S に関する先行研究では,アジュバント(AS02A)を用いた場合,1~4 歳の小児における臨床マラリアに対する防御率は 30%であった.われわれは,ワクチン認可の対象集団である生後 5~17 ヵ月の小児において,より免疫原性の高いアジュバント(AS01E)を用いた RTS,S の有効性を検討した.
ケニアのキリフィとタンザニアのコログエの小児を対象に,RTS,S/AS01E ワクチンと狂犬病ワクチンを比較する無作為化二重盲検試験を実施した.主要エンドポイントは,原虫密度が 2,500/μL 以上の熱帯熱マラリア血症を伴う発熱とした.平均追跡期間は 7.9 ヵ月(4.5~10.5 ヵ月)であった.
計 894 例の小児を RTS,S/AS01E ワクチン投与群,対照ワクチン(狂犬病ワクチン)投与群に無作為に割り付けた.プロトコールに基づく試験手順を終了した 809 例のうち,臨床マラリアを発症した累積患児数は,RTS,S/AS01E ワクチン群で 402 例中 32 例,狂犬病ワクチン群で 407 例中 66 例であった.Cox 回帰分析に基づく RTS,S/AS01E ワクチンの補正後の有効率は 53%(95%信頼区間 [CI] 28~69,P<0.001)であった.全体で,臨床マラリアエピソードの発生数は RTS,S/AS01E ワクチン群で 38 件であったのに対し,狂犬病ワクチン群では 86 件で,全マラリアエピソードに対する RTS,S/AS01E ワクチンの補正後の有効率は 56%であった(95% CI 31~72,P<0.001).894 例全例を対象に intention-to-treat 解析を行った結果,未補正の有効率は 49%であった(95% CI 26~65,P<0.001).重篤な有害事象の発現率は RTS,S/AS01E ワクチン群のほうが低かったが,これは,マラリアに直接起因する入院件数の差のみが原因ではなかった.
RTS,S/AS01E ワクチンは,マラリアワクチンの候補として有望である.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00380393)
本論文(10.1056/NEJMoa0807381)は,2008 年 12 月 8 日に www.nejm.org で発表された.