急性心筋梗塞における再灌流障害に対するシクロスポリンの作用
Effect of Cyclosporine on Reperfusion Injury in Acute Myocardial Infarction
C. Piot and Others
ミトコンドリア膜透過性遷移孔の開口を阻害するシクロスポリンが,再灌流時に生じる致死的心筋障害を低減することが,実験的証拠により示されている.このパイロット試験では,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行時にシクロスポリンを投与することにより,急性心筋梗塞発症時の梗塞サイズを抑えられるかどうかを検討した.
ST 上昇型急性心筋梗塞で入院した患者 58 例を,PCI 直前にシクロスポリン 2.5 mg/kg 体重を静脈内ボーラス投与する群(シクロスポリン群)と,生理食塩水を投与する群(対照群)のいずれかに無作為に割り付けた.梗塞サイズの評価は,梗塞発症後 5 日目に,全例に対してクレアチンキナーゼおよびトロポニン I の放出量の測定により行い,27 例のサブグループでは MRI により行った.
シクロスポリン群と対照群は,虚血時間,危険領域の大きさ,PCI 前の駆出率について同等であった.クレアチンキナーゼの放出量は,シクロスポリン群では対照群と比較して有意に減少した(P=0.04).トロポニン I の放出量の減少は有意ではなかった(P=0.15).5 日目に,MRI 上の高度増強領域(すなわち梗塞組織)の絶対質量は,中央値 37 g(四分位範囲 21~51)対 46 g(四分位範囲 20~65)と,シクロスポリン群では対照群と比較して有意に減少した(P=0.04).シクロスポリン投与による有害作用は検出されなかった.
この小規模パイロット試験では,再灌流時のシクロスポリン投与により,評価項目によっては,梗塞がプラセボ投与と比較して小さくなった.これらのデータは予備的なものであり,より大規模な臨床試験で確認する必要がある.