血液透析導入患者における線維芽細胞増殖因子 23 と死亡率
Fibroblast Growth Factor 23 and Mortality among Patients Undergoing Hemodialysis
O.M. Gutierrez and Others
線維芽細胞増殖因子 23(fibroblast growth factor 23;FGF-23)は,リンの尿中排泄を高め,腎臓での 1,25-ジヒドロキシビタミン D の産生を抑制するホルモンであり,腎疾患患者における高リン血症の緩和を促す.高リン血症と 1,25-ジヒドロキシビタミン D 濃度の低下は,慢性腎臓病(chronic kidney disease;CKD)患者の死亡率との関連が示されているが,FGF-23 濃度が死亡率に及ぼす影響は明らかにされていない.
血液透析治療に導入された患者 10,044 例の前向きコホートで血清リン濃度との関連でみた死亡率を検討し,血液透析導入後の 1 年間に死亡した 200 例と生存例 200 例から成るコホート内症例対照標本で,FGF-23 濃度と死亡率のあいだの関連を分析した.血液透析導入時における FGF-23 濃度の上昇が,死亡率の上昇に関連するという仮説を立てた.
血清リン濃度が最高四分位群(>5.5 mg/dL [1.8 mmol/L])であった場合,正常濃度(3.5~4.5 mg/dL [1.1~1.4 mmol/L])の場合と比較して,多変量補正後の死亡リスクの 20%増加と関連した(ハザード比 1.2,95%信頼区間 [CI] 1.1~1.4).C 末端 FGF-23(cFGF-23)濃度の中央値は,症例群のほうが対照群よりも有意に高かった(2,260 単位/mL 対 1,406 単位/mL,P<0.001).多変量補正後の解析では,FGF-23 濃度の上昇は死亡リスクの単調増加に関連することが示され,連続尺度で検討した場合(cFGF-23 の対数変換値の 1 単位増加に対するオッズ比 1.8,95% CI 1.4~2.4)も,第 1 四分位群を基準カテゴリーとして各四分位群で検討した場合(オッズ比は,第 2 四分位群 1.6 [95% CI 0.8~3.3],第 3 四分位群 4.5 [95% CI 2.2~9.4],第 4 四分位群 5.7 [95% CI 2.6~12.6])も,関連することが示された.
血液透析に導入された患者では,FGF-23 濃度の上昇が,死亡率に独立して関連するとみられる.FGF-23 が CKD 患者におけるリンバランスの管理戦略の指針として用いることのできるバイオマーカーであるかどうかは,今後の研究で検討されるであろう.