March 19, 2009 Vol. 360 No. 12
卵巣機能不全に関連した NR5A1 変異
Mutations in NR5A1 Associated with Ovarian Insufficiency
D. Lourenço and Others
無症候の卵巣機能不全の遺伝的原因はほとんど明らかにされていない.核内受容体 NR5A1(ステロイド産生因子 1 とも呼ばれる)は,視床下部–下垂体–ステロイド産生系に関与する遺伝子の重要な転写制御因子である.NR5A1 の変異は,副腎不全の有無にかかわらず, 46,XY 性機能発達障害の原因となる.最近増えつつあるマウスでの実験結果から,卵巣の発達と機能におけるこの因子の重要な役割が示唆されている.
NR5A1 の変異が卵巣の発達と機能に障害をもたらすという仮説を検証するために,46,XY 性機能発達障害と 46,XX 原発性卵巣機能不全の両方の家族歴のある 4 家族と,孤発性の卵巣機能不全患者 25 例において,NR5A1 の配列決定を行った.副腎不全の臨床的徴候を示す患者はいなかった.
4 家族の構成員と孤発性の卵巣機能不全患者 25 例中 2 例で,NR5A1 にインフレーム欠失,フレームシフト変異,ミスセンス変異が検出された.機能解析から,これらの変異は,NR5A1 の転写促進活性に大きな障害をもたらすことが示唆された.また,これらの変異は,46,XX 性腺形成不全や 46,XX 原発性卵巣機能不全などの一連の卵巣機能異常と関連していた.対照とした 700 を超える対立遺伝子では,これらの変異はみられなかった.
NR5A1 の変異は,46,XX 原発性卵巣機能不全と 46,XY 性機能発達障害に関連している.
本論文(10.1056/NEJMoa0806228)は,2009 年 2 月 25 日に NEJM.org で発表された.