January 8, 2009 Vol. 360 No. 2
2 型糖尿病を有する退役軍人に対する血糖コントロールと血管合併症
Glucose Control and Vascular Complications in Veterans with Type 2 Diabetes
W. Duckworth and Others
2 型糖尿病を発症してからの期間が長い患者において,強化血糖コントロールが心血管イベントに及ぼす影響についてはまだ明らかにされていない.
2 型糖尿病の治療に対する反応が不十分であった退役軍人 1,791 例(平均年齢 60.4 歳)を,強化血糖コントロールを受ける群と標準的な血糖コントロールを受ける群のいずれかに無作為に割り付けた.その他の心血管危険因子に対する治療は同様に行った.糖尿病診断後の平均経過年数は 11.5 年であり,患者の 40%にはすでに心血管イベントの既往があった.強化療法群の糖化ヘモグロビン値の目標を,標準療法群よりも絶対値で 1.5 パーセントポイント低下することとした.主要転帰は,無作為化から最初の主要心血管イベント発生までの期間とした.主要心血管イベントは,心筋梗塞,脳卒中,心血管系の原因による死亡,うっ血性心不全,血管疾患の手術,手術不可能な冠動脈疾患,虚血性壊疽による切断の複合とした.
追跡期間の中央値は 5.6 年であった.糖化ヘモグロビン値の中央値は,標準療法群で 8.4%,強化療法群で 6.9%であった.主要転帰は,標準療法群で 264 例,強化療法群で 235 例発生した(強化療法群のハザード比 0.88,95%信頼区間 [CI] 0.74~1.05,P=0.14).主要転帰の各評価項目と,あらゆる原因による死亡率(ハザード比 1.07,95% CI 0.81~1.42,P=0.62)に群間で有意差は認められなかった.細小血管合併症にも群間差は認められなかった.有害事象(主に低血糖)の発現率は,標準療法群で 17.6%,強化療法群で 24.1%であった.
コントロール不良の 2 型糖尿病患者に対し強化血糖コントロールを行っても,アルブミン尿進展(P=0.01)を除いて,主要心血管イベント,死亡,細小血管合併症の発生率に有意な影響は認められなかった.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00032487)
本論文(10.1056/NEJMoa0808431)は,2008 年 12 月 17 日に NEJM.org で発表された.