January 29, 2009 Vol. 360 No. 5
腎提供の長期転帰
Long-Term Consequences of Kidney Donation
H.N. Ibrahim and Others
生体ドナーによる腎提供後の腎臓の長期転帰に対する関心が高まっている.全体的なエビデンスからは,生体腎ドナーの生存率は非ドナーと同等であり,末期腎不全(ESRD)のリスクは上昇しないことが示唆されている.しかし,これまでの研究は検討したドナー数が比較的少なく,追跡期間が短かった.
1963~2007 年に腎提供を行った 3,698 人の腎ドナーを対象に,生存状況と ESRD の生涯リスクを確認した.2003~07 年については,255 人のドナーの糸球体濾過率(GFR)と尿中アルブミン排泄量を測定し,高血圧症の有病率,全般的健康状態,QOL を評価した.
腎ドナーの生存率は,年齢,性別,人種・民族についてマッチさせた対照者と同等であった.11 人で ESRD が発現し,その比率は 100 万人年あたり 180 症例であったが,一般集団では 100 万人年あたり 268 症例であった.腎提供から平均(±SD)12.2±9.2 年後の時点で,255 人のサブグループの 85.5%で GFR が 60 mL/分/(体表面積)1.73 m2 以上を示し,32.1%で高血圧,12.7%でアルブミン尿が認められた.年齢と体格指数(BMI)の高さは,60 mL/分/(体表面積)1.73 m2 未満の GFR と高血圧の両方に関連していたが,腎提供からの経過期間の長さはいずれにも関連していなかった.しかし,腎提供からの経過期間はアルブミン尿と独立に関連していた.QOL スコアは大半のドナーで一般集団の基準値よりも優れており,併存疾患の有病率は年齢,性別,人種・民族,BMI についてマッチさせた全米健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey:NHANES)の対照者と同等であった.
入念にスクリーニングした腎ドナーでは,生存率と ESRD のリスクは一般集団と同等であるとみられる.調査したドナーの大半では,GFR が維持され,アルブミン排泄が正常であり,QOL が優れていた.