September 17, 2009 Vol. 361 No. 12
性ホルモン結合グロブリンと 2 型糖尿病リスクの男女別検討
Sex Hormone–Binding Globulin and Risk of Type 2 Diabetes in Women and Men
E.L. Ding and Others
性ホルモン結合グロブリンの循環血中濃度はインスリン抵抗性と逆相関を示すが,その濃度から 2 型糖尿病の発症リスクが予測されるかどうかは明らかにされていない.
女性の健康調査(Women's Health Study)の参加者のうち,ホルモン療法を受けていない閉経後女性を対象に,コホート内症例対照研究を行った(新たに 2 型糖尿病と診断された患者 359 例,対照 359 例).血漿中の性ホルモン結合グロブリン濃度を測定し,性ホルモン結合グロブリンをコードする遺伝子 SHBG(蛋白値に強く関連)の 2 つの遺伝子多型について遺伝子型を決定し,メンデルランダム化解析を行った.次に,医師の健康調査 II(Physicians' Health Study II)に参加した男性の独立したコホートで再現性を検討した(新たに 2 型糖尿病と診断された患者 170 例,対照 170 例).
女性では,性ホルモン結合グロブリンの血中濃度が高いほど,2 型糖尿病のリスクが低くなることと前向きな相関を示した.すなわち多変量オッズ比は,血中濃度の第 1(最低)四分位群を 1.00 とすると,第 2 四分位群 0.16(95%信頼区間 [CI] 0.08~0.33),第 3 四分位群 0.04(95% CI 0.01~0.12),第 4(最高)四分位群 0.09(95% CI 0.03~0.21)であった(傾向性の P<0.001).このような前向きな関連は,男性でも再現性が確認された(血中濃度の最低四分位群と比較した最高四分位群のオッズ比 0.10,95% CI 0.03~0.36,傾向性の P<0.001).SHBG の一塩基(SNP)rs6259,rs6257 については,それぞれ野生型対立遺伝子のホモ接合体を有する場合と比較して,rs6259 変異型対立遺伝子を有する場合性ホルモン結合グロブリン濃度は 10%高く(P=0.005),rs6257 変異型対立遺伝子を有する場合 10%低かった(P=0.004).また,2 つの SNP 変異体は,それぞれ関連する性ホルモン結合グロブリン濃度に対応する方向で,2 型糖尿病のリスクと相関を示した.メンデルランダム化解析では,性ホルモン結合グロブリンの血中濃度が 1 標準偏差増加するごとの 2 型糖尿病の予測オッズ比は女性 0.28(95% CI 0.13~0.58),男性 0.29(95% CI 0.15~0.58)となり,この結果から,性ホルモン結合グロブリンが 2 型糖尿病リスクに関与している可能性が示唆された.
性ホルモン結合グロブリンの血中濃度が低いことは,男女ともに 2 型糖尿病リスクの強力な予測因子である.2 型糖尿病リスクの層別化と介入における SHBG の遺伝子型と血中濃度の臨床的有用性について,さらなる研究が必要である.