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July 9, 2009 Vol. 361 No. 2

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BRCA の変異保有者の腫瘍におけるポリ(ADP リボース)ポリメラーゼの阻害
Inhibition of Poly(ADP-Ribose)Polymerase in Tumors from BRCA Mutation Carriers

P.C. Fong and Others

背景

BRCA1BRCA2 の変異保有者に発生する癌をはじめとする特定 DNA の修復障害を伴う癌の治療において,ポリ(アデノシン二リン酸 [ADP] リボース)ポリメラーゼ(PARP)の阻害は,合成致死性を利用した戦略となる可能性がある.ヒトを対象に,新規の強力な経口活性 PARP 阻害薬であるオラパリブ(olaparib [AZD2281])の臨床評価を行った.

方 法

この試験は,オラパリブの薬物動態学的・薬力学的特性の解析を行う第 1 相試験であった.試験対象集団に BRCA1BRCA2 の変異保有者が多く含まれるよう患者を選択した.

結 果

60 例を登録し,治療を行った.そのうち 22 例が BRCA1BRCA2 いずれかの変異を保有していた.1 例は BRCA に関連した癌の強い家族歴を有していたが,変異検査を拒否した.オラパリブの投与量と投与スケジュールは,最初に 10 mg 1 日 1 回を 3 週間のうち 2 週間投与し,600 mg 1 日 2 回の継続を最大として増量した.可逆的な用量制限毒性が,400 mg 1 日 2 回の投与を受けた 8 例中 1 例(グレード 3 の気分変化と疲労)と,600 mg 1 日 2 回の投与を受けた 5 例中 2 例(グレード 4 の血小板減少症とグレード 3 の傾眠)でみられたため,BRCA1BRCA2 の変異保有者のみから成る別のコホートを登録し,オラパリブ 200 mg 1 日 2 回の投与を行った.有害作用はそのほか,軽度の胃腸症状などがみられた.変異保有者で有害作用の明らかな増加は認められなかった.薬物動態データからは速やかな吸収と排泄が示され,薬力学的検討では代用検体(末梢血単核球,抜いた眉毛の毛包)と腫瘍組織において PARP の阻害が確認された.客観的抗腫瘍活性は変異保有者でのみ報告されたが,その全例が卵巣癌,乳癌,前立腺癌のいずれかであり,複数の治療レジメンを受けていた.

結 論

オラパリブには,従来の化学療法の有害作用はほとんどみられず,PARP 阻害作用と,BRCA1BRCA2 いずれかの変異を伴う癌に対する抗腫瘍活性が認められる.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00516373)

本論文(10.1056/NEJMoa0900212)は,2009 年 6 月 24 日に NEJM.org で発表された.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2009; 361 : 123 - 34. )