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July 9, 2009 Vol. 361 No. 2

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肺炭疽治療のためのラキシバクマブ
Raxibacumab for the Treatment of Inhalational Anthrax

T.-S. Migone and Others

背景

炭疽菌(Bacillus anthracis)による肺炭疽は高い死亡率と関連しているが,主に毒素による障害に起因している.ラキシバクマブ(raxibacumab)は,炭疽菌毒素成分である防御抗原に対するヒト IgG1λ モノクローナル抗体である.

方 法

ラキシバクマブの予防薬としての有効性と,発症後の治療薬としての有効性を評価するため,ウサギとサルを対象に 4 件の無作為化プラセボ対照試験を行った.対象動物に,半数致死量の約 100 倍(予防試験)と約 200 倍(治療介入試験)に相当する炭疽菌芽胞のエアロゾル化による標的曝露を行った.治療介入試験では,症状発症をモニターした.血清中の防御抗原,有意な体温上昇,あるいはその両方が認められた動物には,20 mg/kg あるいは 40 mg/kg の投与量で,ラキシバクマブまたはプラセボの単回静脈内ボーラス投与を行った.主要エンドポイントは 14 日(ウサギ),28 日(サル)の時点での生存率とした.安全性試験として,健常ヒトボランティア 333 例を対象に,ラキシバクマブの静脈内投与(40 mg/kg)を行った.

結 果

ウサギ・サルともに,防御抗原検出までの時間は菌血症発症までの時間と相関していた(r=0.9,P<0.001).治療介入試験において,ウサギの生存率は,ラキシバクマブ 40 mg/kg 群(44% [18 例中 8 例])のほうがプラセボ群よりも有意に高かった(P=0.003).サルにおいても,ラキシバクマブの投与は生存率を有意に上昇させた(64% [14 例中 9 例] に対し,プラセボ群 0% [12 例中 0 例],P<0.001).ヒトに対するラキシバクマブ 40 mg/kg の静脈内投与では,半減期が 20~22 日で,ラキシバクマブの最高血中濃度は動物で示された防御抗原濃度を超えていた.ラキシバクマブの濃度は,臨床的利益が予測される代替エンドポイントとなる.

結 論

ラキシバクマブの単回投与により,肺炭疽の症状を呈するウサギやサルにおいて生存率が改善した.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00639678)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2009; 361 : 135 - 44. )