October 1, 2009 Vol. 361 No. 14
周産期低酸素性虚血性脳症の治療のための中等度低体温療法
Moderate Hypothermia to Treat Perinatal Asphyxial Encephalopathy
D.V. Azzopardi and Others
低酸素性虚血性脳症の新生児に低体温療法を行うことで,神経発達転帰が改善されるかどうかは明らかではない.
在胎週数が 36 週以上で,周産期低酸素性虚血性脳症を有する生後 6 時間未満の新生児を対象に無作為化試験を行った.集中治療に加えて 72 時間にわたり体温を 33.5℃まで冷却する群(冷却群)と,集中治療のみを行う群(非冷却群)を比較した.主要転帰は,生後 18 ヵ月の時点での死亡または重度の神経発達障害とした.事前に規定した副次的転帰は,12 の神経学的転帰と 14 のその他の有害転帰とした.
登録した新生児 325 例のうち,163 例を冷却群に,162 例を非冷却群に割り付けた.冷却群では 42 例が死亡し,32 例は生存していたが重度の神経発達障害が認められたのに対し,非冷却群では 44 例が死亡し,42 例に重度の障害が認められた(いずれかの転帰の相対リスク 0.86,95%信頼区間 [CI] 0.68~1.07,P=0.17).冷却群の新生児では,神経学的異常を伴わない生存率が上昇した(相対リスク 1.57,95% CI 1.16~2.12,P=0.003).生存児では,冷却により脳性麻痺のリスクが減少し(相対リスク 0.67,95% CI 0.47~0.96,P=0.03),ベイリー乳幼児発達検査 II(Bayley Scales of Infant Development II)の精神発達指数と精神運動発達指数(それぞれ P=0.03),ならびに粗大運動能力分類システム(Gross Motor Function Classification System)(P=0.01)のスコアが改善した.冷却群におけるその他の神経学的転帰の改善は有意ではなかった.有害事象の大部分は生命に関わるものではなく,冷却との関連はみられなかった.
周産期仮死後の新生児に対し 72 時間にわたる中等度低体温療法を行うことで,死亡と重度の障害の複合発生率に有意な減少はみられなかったが,生存児の神経学的転帰に改善がみられた.(Current Controlled Trials 番号:ISRCTN89547571)