October 15, 2009 Vol. 361 No. 16
高齢者における透析導入前後の機能状態
Functional Status of Elderly Adults before and after Initiation of Dialysis
M. Kurella Tamura and Others
高齢の末期腎不全患者において,透析前の機能状態が透析導入後も維持されるかどうかは明らかではない.
介護施設入居者の全米登録とリンクさせた透析患者の全米登録を用いて,米国で 1998 年 6 月~2000 年 10 月に透析を開始し,透析導入前の機能状態が 1 回以上評価されていた入居者全 3,702 例を同定した.機能状態は,7 つの日常生活動作における依存度で評価した(Minimum Data Set–Activities of Daily Living [MDS–ADL]:0~28 点で,スコアが高いほど機能障害が大きいことを表す).
MDS–ADL スコアの中央値は,透析導入前の 3 ヵ月間は 12 点であったのに対し,透析導入後の 3 ヵ月間は 16 点へと上昇した.透析導入後の 3 ヵ月間は介護施設入居者の 39%で機能状態が維持されていたが,12 ヵ月後までに 58%が死亡し,透析導入前の機能状態が維持されていたのは 13%にすぎなかった.変量効果モデルにおいて,透析導入は,MDS–ADL スコア 2.8 点(95%信頼区間 [CI] 2.5~3.0)の上昇で示されるとおり,機能状態の急激な低下と相関を示した.この低下は,年齢,性別,人種,および透析導入前の機能状態から予測される経過とは独立していた.透析導入と関連する機能状態の低下は,透析導入前の 3 ヵ月間に機能状態が急速に低下したかどうかで補正しても,依然として大きかった(1.7 点,95% CI 1.4~2.1).
末期腎不全の介護施設入居者に対する透析導入は,機能状態の持続的かつ大幅な低下と関連している.