November 5, 2009 Vol. 361 No. 19
外陰上皮内腫瘍に対する HPV-16 腫瘍性蛋白を標的としたワクチン接種
Vaccination against HPV-16 Oncoproteins for Vulvar Intraepithelial Neoplasia
G.G. Kenter and Others
外陰上皮内腫瘍は,高リスク型ヒトパピローマウイルス(HPV),主に 16 型(HPV-16)により引き起こされる慢性疾患である.自然退縮するのは患者の 1.5%未満であり,術後の再発率が高い.
合成長鎖ペプチドワクチンの免疫原性と有効性を,HPV-16 陽性・高グレード外陰上皮内腫瘍患者を対象に検討した.HPV-16 陽性・グレード 3 外陰上皮内腫瘍患者 20 例に,HPV-16 ウイルス腫瘍性蛋白 E6・E7 由来の長鎖ペプチドを混合し,不完全フロイントアジュバントを加えたワクチンを 3 回または 4 回接種した.エンドポイントは,臨床反応と HPV-16 特異的 T 細胞応答とした.
主な有害事象として,局所腫脹が患者の 100%にみられ,発熱が 64%にみられた.これらの有害事象に,米国国立がん研究所(National Cancer Institute)の有害事象共通毒性規準(Common Terminology Criteria for Adverse Events)のグレード 2 を超えるものはなかった.最後の接種から 3 ヵ月後の追跡調査では,20 例中 12 例(60%,95%信頼区間 [CI] 36~81)に臨床反応が認められ,症状の軽減が報告された.5 例では病変が完全に退縮し,うち 4 例では HPV-16 が検出されなかった.12 ヵ月後の追跡調査では,19 例中 15 例に臨床反応が認められ(79%,95% CI 54~94),うち 9 例では完全寛解が得られた(47%,95% CI 24~71).24 ヵ月後の追跡調査時にもこの完全寛解率は維持されていた.ワクチンによる T 細胞応答は全例で認められ,事後的解析から,3 ヵ月後に完全寛解が得られた患者では,完全寛解が得られなかった患者に比べ,インターフェロンγ関連増殖性 CD4+T 細胞応答が有意に強く,インターフェロンγ産生 CD8+T 細胞応答が広範であることが示唆された.
HPV-16 陽性・グレード 3 外陰上皮内腫瘍患者に対し,HPV-16 ウイルス腫瘍性蛋白 E6・E7 に対する合成長鎖ペプチドワクチンを接種することで,臨床反応が得られる可能性がある.完全寛解は,HPV-16 特異的免疫の誘導と相関すると考えられる.