November 12, 2009 Vol. 361 No. 20
2009 パンデミック H1N1 インフルエンザウイルスに対する交差反応性抗体
Cross-Reactive Antibody Responses to the 2009 Pandemic H1N1 Influenza Virus
K. Hancock and Others
新型インフルエンザ A(H1N1)のパンデミックウイルスが出現し,若年層を中心に世界的に流行している.ヒトにおける既存の免疫レベルを調査し,季節性インフルエンザワクチン戦略を評価するため,さまざまな年齢層を対象に,過去のインフルエンザ感染や予防接種によって生じた抗体の,今回のパンデミックウイルスに対する反応を測定した.
マイクロ中和試験を用いて,献血者,および近年の季節性インフルエンザワクチンまたは 1976 年のブタインフルエンザワクチン接種者の保存血清検体における,パンデミック H1N1 ウイルス(2009 H1N1)に対する交差反応性抗体を測定した.
2009 H1N1 に対する交差反応性抗体の力価は,1980 年以降に出生した 107 人のうち 4 人(4%)が 40 以上であったのに対し,1950 年以前に出生した 115 人では 39 人(34%)が 80 以上であった.季節性インフルエンザに対する三価不活化ワクチンの接種により,2009 H1N1 に対する交差反応性抗体の力価が 4 倍以上に増加した割合は,6 ヵ月~9 歳の小児 55 人では 0%,18~64 歳の成人 231 人では 12~22%,60 歳以上の成人 113 人では 5%以下であった.アジュバント添加季節性ワクチンの接種で交差反応性抗体の産生がさらに増強されることはなかった.1976 ニュージャージー A 型ブタインフルエンザワクチンの接種では,成人において 2009 H1N1 に対する交差反応性抗体が大幅に増強された.
いずれの年齢層においても,近年の季節性インフルエンザに対するワクチン接種では,アジュバント添加の有無にかかわらず,2009 H1N1 に対する交差反応性抗体はほとんど誘導されなかった.30 歳未満では,今回のパンデミックウイルスに対する交差反応性抗体はほとんど認められなかった.しかし,高齢者では交差反応性抗体をすでに有している例も認められた.