November 26, 2009 Vol. 361 No. 22
左室駆出率が正常な徐脈患者における両室ペーシング
Biventricular Pacing in Patients with Bradycardia and Normal Ejection Fraction
C.-M. Yu and Others
従来の右室心尖部ペーシングにより,左室機能に有害な影響が生じる可能性があることが観察研究で示唆されている.この試験では,左室駆出率が正常な徐脈患者の左室収縮機能低下と心臓リモデリングの予防において,両室ペーシングは右室心尖部ペーシングより優れているかどうかを検討した.
前向き二重盲検多施設共同試験において,両室ペースメーカーの植込みに成功した患者 177 例を,両室ペーシングを受ける群(89 例)と,右室心尖部ペーシングを受ける群(88 例)に無作為に割り付けた.主要エンドポイントは 12 ヵ月後の左室駆出率と左室収縮末期容積とした.
12 ヵ月後,平均左室駆出率は,右室ペーシング群のほうが両室ペーシング群より有意に低く(54.8±9.1% 対 62.2±7.0%,P<0.001),絶対差は 7.4 パーセントポイントであった.これに対して,左室収縮末期容積は,右室ペーシング群のほうが両室ペーシング群より有意に大きく(35.7±16.3 mL 対 27.6±10.4 mL,P<0.001),ベースラインからの変化における両群間の相対差は 25%であった(P<0.001).既存の左室拡張機能障害の有無などで事前に規定したサブグループでは,右室心尖部ペーシングによる有害な影響がみられた.左室駆出率は右室ペーシング群 8 例(9%),両室ペーシング群 1 例(1%)で 45%未満に低下した(P=0.02).右室ペーシング群の 1 例が死亡し,右室ペーシング群の 6 例,両室ペーシング群の 5 例が心不全のため入院した(P=0.74).
収縮機能が正常な患者に対して従来の右室心尖部ペーシングを行うと,有害な左室リモデリングと,左室駆出率の低下がみられた.このような影響は両室ペーシングにより予防された.(Centre for Clinical Trials 番号:CUHK_CCT00037)