静脈瘤出血を合併した肝硬変患者に対する経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術の早期施行
Early Use of TIPS in Patients with Cirrhosis and Variceal Bleeding
J.C. García-Pagán and Others
Child–Pugh 分類 C の肝硬変患者や分類 B の肝硬変で内視鏡で持続性出血が認められる患者は,治療失敗や予後不良のリスクが高く,経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術(TIPS)によるレスキュー治療を受けたとしても,それらのリスクは変わらない.この研究では,そのような患者に対する TIPS の早期施行について評価した.
静脈瘤急性出血を合併した肝硬変患者で,血管作用薬+内視鏡による治療を受けていた 63 例を,入院後 24 時間以内に次の 2 群に無作為に割り付けた;無作為化後 72 時間以内にポリテトラフルオロエチレンで被覆したステントによる治療を行う群(早期 TIPS 群,32 例),血管作用薬を継続しながら 3~5 日後にプロプラノロールまたはナドロールの投与を開始し,内視鏡的結紮術(EBL)を長期にわたり施行し,必要に応じてレスキュー治療として TIPS を行う群(薬物療法+EBL 群,31 例).
追跡期間中央値 16 ヵ月のあいだに再出血や出血コントロールの失敗(複合エンドポイント)が認められたのは,薬物療法+EBL 群で 14 例であったのに対し,早期 TIPS 群では 1 例であった(P=0.001).生命表法による 1 年複合エンドポイント未発生率は,薬物療法+EBL 群で 50%であったのに対し,早期 TIPS 群では 97%であった(P<0.001).全体で 16 例が死亡した(薬物療法+EBL 群 12 例,早期 TIPS 群 4 例,P=0.01).生命表法による 1 年生存率は,薬物療法+EBL 群で 61%であったのに対し,早期 TIPS 群では 86%であった(P<0.001).薬物療法+EBL 群の 7 例がレスキュー治療として TIPS を受けたが,4 例が死亡した.薬物療法+EBL 群では,早期 TIPS 群より集中治療室入室日数が有意に長く,追跡期間における入院期間の比率も有意に高かった.重篤な有害事象について,両群間で有意差は認められなかった.
静脈瘤急性出血により入院した治療失敗のリスクが高い肝硬変患者において,TIPS の早期施行は治療失敗と死亡の有意な減少に関連していた.(Current Controlled Trials 番号:ISRCTN58150114)