ナイジェリアで流行しているワクチン由来ポリオウイルスがもつ意義
Implications of a Circulating Vaccine-Derived Poliovirus in Nigeria
H.E. Jenkins and Others
ナイジェリアで流行しているワクチン由来ポリオウイルス(cVDPV)の集団感染に関する記録は過去最大となり,cVDPV の病原性,ポリオ関連疾患の臨床的重症度,管理対策の有効性について,cVDPV と野生型ポリオウイルス(WPV)を比較分析する貴重な機会が得られた.
ナイジェリアで 2005 年 1 月 1 日~2009 年 6 月 30 日にルーチンに行われたサーベイランスにおいて,便中に cVDPV 2 型,WPV 1 型,WPV 3 型の排出を認める急性弛緩性麻痺症例を同定した.これらの症例の臨床像,各ウイルスによる発症率,各ウイルスによる麻痺の予防における経口ポリオワクチンの有効性を比較した.
cVDPV 2 型 278 例,WPV 1 型 2,323 例,WPV 3 型 1,059 例のうち,麻痺の重症度に有意差は認められなかった.5 歳未満の感受性を有する小児 100,000 人あたりの推定平均年間発症率は,WPV 1 型 6.8(95%信頼区間 [CI] 5.9~7.7),cVDPV 2 型 2.7(95% CI 1.9~3.6),WPV 3 型 4.0(95% CI 3.4~4.7)であった.三価経口ポリオワクチンの推定有効性は,cVDPV 2 型による麻痺に対しては接種 1 回あたり 38%(95% CI 15~54%)であり,WPV 1 型による麻痺(13%,95% CI 8~18%),WPV 3 型による麻痺(20%,95% CI 12~26%)に比べて顕著に高かった.血清型 1 型と 3 型の一価経口ポリオワクチンの使用頻度が高まったことで,ワクチンによる 1 型と 3 型に対する集団免疫は向上し,cVDPV 2 型に対する免疫は低下したのである.
ナイジェリアで最近流行している cVDPV に関連した疾患の発症率と重症度は,WPV 関連疾患と同程度であった.WPV リスク管理のための国際的計画には,根絶前も根絶後も,同様の毒性と病原性を有する cVD が発生する可能性を念頭におくべきである.