February 18, 2010 Vol. 362 No. 7
予防的血小板輸血の投与量と出血予防
Dose of Prophylactic Platelet Transfusions and Prevention of Hemorrhage
S.J. Slichter and Others
血小板産生能低下による血小板減少症患者の出血に対する予防的血小板輸血について,その投与量による出血予防効果を検討するための試験を行った.
血液癌や固形癌に対して造血幹細胞移植あるいは化学療法を受ける入院患者を対象に,朝の血小板数が 10,000/mm3 以下の場合に,予防的血小板輸血を,少量,中等量,大量(血小板数はそれぞれ体表面積 1 m2 あたり 1.1×1011,2.2×1011,4.4×1011)のいずれかで行う 3 群に無作為に割り付けた.出血の臨床的徴候を毎日評価した.主要エンドポイントは,グレード 2 以上の出血(世界保健機関 [WHO] の基準をもとに判定)とした.
血小板輸血を少なくとも 1 回受けた 1,272 例のうち,主要エンドポイントは,少量群の 71%,中等量群の 69%,大量群の 70%で観察された(有意差は認められなかった).より重度の出血やその他の有害事象の発生率は 3 群で同等であった.輸血された血小板の総量の中央値は,少量群(9.25×1011)が,中等量群(11.25×1011),大量群(19.63×1011)より有意に低かった(少量 対 中等量で P=0.002;大量 対 少量,大量 対 中等量で P<0.001).しかし血小板輸血回数の中央値は,少量群(5 回)が,中等量群(3 回),大量群(3 回)に比べ有意に高かった(少量 対 中等量,少量 対 大量とも P<0.001).試験期間中の出血は,朝の血小板値が 5,000/mm3 以下の日の 25%で認められたのに対し,6,000~80,000/mm3 の日は 17%で認められた(P<0.001).
予防的血小板輸血に少量の血小板を用いた場合,患者あたりの輸血血小板数は減少したが,輸血回数は増加した.予防的血小板輸血における血小板数は,体表面積 1 m2 あたり 1.1×1011~4.4×1011 の範囲では出血の発生に影響を及ぼさなかった.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00128713)