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January 7, 2010 Vol. 362 No. 1

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黄色ブドウ球菌の鼻腔内保菌者における手術部位感染の予防
Preventing Surgical-Site Infections in Nasal Carriers of Staphylococcus aureus

L.G.M. Bode and Others

背景

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の鼻腔内保菌者は,医療関連感染のリスクが高い.入院時に鼻腔・外鼻の除菌を行うことでこのリスクが低下する可能性がある.

方 法

多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験において,リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)を用いて S. aureus 鼻腔内保菌者を迅速に同定したのち,ムピロシン鼻腔用軟膏とクロルヘキシジン石鹸で除菌することにより,S. aureus の院内感染リスクが低下するかどうかを検討した.

結 果

2005 年 10 月~07 年 6 月に,6,771 例の患者に対して,入院時にスクリーニングを行った.1,251 例の鼻腔ぬぐい液 1,270 検体が S. aureus 陽性であった.このうち 917 例を intention-to-treat 解析の対象として登録し,うち 808 例(88.1%)に手術が行われた.PCR で同定された S. aureus 株はすべて,メチシリンとムピロシンに対する感受性を有していた.S. aureus 感染率は,ムピロシン+クロルヘキシジン群 3.4%(504 例中 17 例),プラセボ群 7.7%(413 例中 32 例)であった(感染の相対リスク 0.42,95%信頼区間 [CI] 0.23~0.75).ムピロシンとクロルヘキシジンによる除菌は,深部感染に対してもっとも有効であった(相対リスク 0.21,95% CI 0.07~0.62).あらゆる原因による院内死亡率に両群間で有意差は認められなかった.院内感染が発生するまでの時間は,プラセボ群のほうがムピロシン+クロルヘキシジン群より短かった(P=0.005).

結 論

院内で発生する S. aureus 手術部位感染は,入院時に S. aureus 鼻腔内保菌の迅速スクリーニングを行い,保菌者に対する除菌を行うことによって減少させることができる.(Current Controlled Trials 番号:ISRCTN56186788)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2010; 362 : 9 - 17. )