January 7, 2010 Vol. 362 No. 1
手術部位の消毒に用いるクロルヘキシジンアルコールとポビドンヨードの比較
Chlorhexidine–Alcohol versus Povidone–Iodine for Surgical-Site Antisepsis
R.O. Darouiche and Others
患者の皮膚は,手術部位感染を引き起こす病原体の主要な発生部位であるため,最適な術前皮膚消毒を行えば術後感染を減少させられる可能性がある.われわれは,クロルヘキシジンアルコールによる術前皮膚消毒は,ポビドンヨードに比べて感染防御能が高いと仮定した.
6 病院にて準清潔手術を受ける成人を,術前の皮膚消毒処置として,クロルヘキシジンアルコールを塗擦する群と,ポビドンヨードを塗擦・塗布する群のいずれかに無作為に割り付けた.主要転帰は,術後 30 日以内の全手術部位感染とした.副次的転帰は,発生部位別の手術部位感染とした.
849 例(クロルヘキシジンアルコール群 409 例,ポビドンヨード群 440 例)を intention-to-treat 解析の対象とした.全手術部位感染率は,クロルヘキシジンアルコール群のほうがポビドンヨード群より有意に低かった(9.5% 対 16.1%,P=0.004,相対リスク 0.59,95%信頼区間 0.41~0.85).クロルヘキシジンアルコールは,ポビドンヨードに比べて,表層感染(4.2% 対 8.6%,P=0.008),深部感染(1% 対 3%,P=0.05)のいずれの防御にも有意であったが,臓器・体腔感染(4.4% 対 4.5%)の防御には有意差はみられなかった.30 日間の追跡調査を完了した 813 例の per-protocol 解析でも同様の結果が観察された.有害事象は両群で同程度であった.
準清潔手術後の手術部位感染予防において,クロルヘキシジンアルコールによる術前皮膚消毒はポビドンヨードより優れていた.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00290290)