October 14, 2010 Vol. 363 No. 16
変形性膝関節症の疼痛に対するタネズマブ療法
Tanezumab for the Treatment of Pain from Osteoarthritis of the Knee
N.E. Lane and Others
損傷や炎症が生じた組織で神経成長因子の発現が増加することは,疼痛の増悪と関連している.この proof-of-concept 研究は,神経成長因子に結合しこれを阻害するヒト化モノクローナル抗体,タネズマブ(tanezumab)の安全性と鎮痛効果を検討するためにデザインされた.
変形性膝関節症患者 450 例を,1 日目と 56 日目に,タネズマブ(体重 1 kg あたり 10 μg,25 μg,50 μg,100 μg,200 μgのいずれかの用量)を投与する群と,プラセボを投与する群に無作為に割り付けた.主要有効性評価項目は,歩行時の膝痛と,患者評価による治療反応の総合評価とした.また,西オンタリオ大・マクマスター大変形性関節症指数(WOMAC)を用いて疼痛,こわばり,身体機能を評価し,リウマチ学委員会評価指標と国際変形性関節症学会の臨床試験反応基準イニシアチブ常任委員会(OMERACT–OARSI)の基準を用いて反応率を評価し,また安全性を評価した.
1~16 週を平均すると,歩行時の膝痛のベースラインからの平均減少率は,タネズマブ群全体で 45~62%であったのに対し,プラセボ群では 22%であった(P<0.001).タネズマブにより,患者評価による治療反応の総合評価は,プラセボと比べて有意に大きな改善が認められた(スコアの平均増加率は,タネズマブ群全体で 29~47%であったのに対し,プラセボ群では 19%であった;P≦0.001).OMERACT–OARSI 基準に基づく反応率は,タネズマブ群では 74~93%であったのに対し,プラセボ群では 44%であった(P<0.001).有害事象発生率は,タネズマブ群 68%,プラセボ群 55%であった.タネズマブ群で高頻度に認められた有害事象は,頭痛(患者の 9%),上気道感染(7%),感覚異常(7%)であった.
この proof-of-concept 研究において,中等度~重度の変形性膝関節症患者に対するタネズマブ療法は関節痛の軽減と機能の改善に関連し,有害事象は軽~中等度であった.(Rinat Neuroscience 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00394563)