October 28, 2010 Vol. 363 No. 18
コントロール不良成人喘息に対する臭化チオトロピウムによる段階的治療
Tiotropium Bromide Step-Up Therapy for Adults with Uncontrolled Asthma
S.P. Peters and Others
長時間作用型 β 刺激薬(LABA)療法により,吸入グルココルチコイド単独ではコントロールが不十分な喘息患者の症状は改善する.コントロール不良の成人喘息に対する代替治療が必要とされている.
喘息患者 210 例を対象とした二重盲検三元トリプルダミークロスオーバー試験において,吸入グルココルチコイドに臭化チオトロピウム(慢性閉塞性肺疾患の治療薬として承認されている長時間作用型抗コリン薬で,喘息の治療には承認されていない)を追加する治療法を,吸入グルココルチコイドの用量を倍増する治療法(主要優位性比較),または LABA のサルメテロールを追加する治療法(副次的非劣性比較)と比較評価した.
チオトロピウム群では,吸入グルココルチコイド倍増群に比べ,朝の最大呼気流量(PEF)の測定により評価した主要転帰が優れており,その平均差は 25.8 L/分(P<0.001)であった.多くの副次的転帰も優れていた;夕の PEF の差 35.3 L/分(P<0.001),喘息コントロール日数の差 0.079(P=0.01),気管支拡張薬投与前の 1 秒量(FEV1)の差 0.10 L(P=0.004),1 日症状スコアの差 -0.11 ポイント(P<0.001).チオトロピウムの追加は,評価したすべての転帰について,サルメテロールの追加と比べても非劣性であり,気管支拡張薬投与前の FEV1 の増加はサルメテロールより大きく,その差は 0.11 L(P=0.003)であった.
吸入グルココルチコイドにチオトロピウムを追加したことにより,コントロールが不十分な喘息患者の症状と肺機能が改善した.その効果はサルメテロールを追加した場合と同程度であると考えられた.(米国国立心臓・肺・血液研究所から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00565266)