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December 16, 2010 Vol. 363 No. 25

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冠動脈心疾患患者・冠動脈心疾患の高リスク患者におけるアナセトラピブの安全性
Safety of Anacetrapib in Patients with or at High Risk for Coronary Heart Disease

C.P. Cannon and Others

背景

アナセトラピブ(anacetrapib)は,高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール値を上昇させ,低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール値を低下させるコレステリルエステル転送蛋白阻害薬である.

方 法

無作為化二重盲検プラセボ対照試験において,冠動脈心疾患患者と冠動脈心疾患の高リスク患者を対象に,アナセトラピブの有効性プロファイルと安全性プロファイルを評価した.スタチンを服用中で LDL コレステロール値がガイドラインの推奨値と一致している適格患者を,1 日 1 回アナセトラピブ 100 mg を投与する群と,プラセボを投与する群に割り付け,18 ヵ月間投与した.主要エンドポイントは,24 週後の LDL コレステロール値のベースラインからの変化(%)(HDL コレステロール値は副次的エンドポイントとした),および 76 週後までのアナセトラピブの安全性プロファイルと副作用プロファイルとした.心血管イベントと死亡について前向きに評価した.

結 果

1,623 例を無作為化した.24 週後までに,アナセトラピブ群では LDL コレステロール値が 81 mg/dL(2.1 mmol/L)から 45 mg/dL(1.2 mmol/L)に低下したのに対し,プラセボ群では 82 mg/dL(2.1 mmol/L)から 77 mg/dL(2.0 mmol/L)に低下し(P<0.001),アナセトラピブ群の低下はプラセボ群より 39.8%大きかった.また,アナセトラピブ群では HDL コレステロール値が 41 mg/dL(1.0 mmol/L)から 101 mg/dL(2.6 mmol/L)に上昇したのに対し,プラセボ群では 40 mg/dL(1.0 mmol/L)から 46 mg/dL(1.2 mmol/L)に上昇し(P<0.001),アナセトラピブ群の上昇はプラセボ群より 138.1%大きかった.76 週間で,アナセトラピブ群の血圧,電解質濃度,アルドステロン濃度に,プラセボ群と比較して変化は認められなかった.事前に規定した心血管イベントは,アナセトラピブ群 16 例(2.0%),プラセボ群 21 例(2.6%)に認められた(P=0.40).事前に規定したベイズ解析から,このイベントの分布では,トルセトラピブ(torcetrapib)でみられたような心血管イベント発生率の 25%の上昇は,アナセトラピブとは関連しないという予測確率(信頼度)が 94%となることが示された.

結 論

アナセトラピブによる治療には,LDL コレステロールと HDL コレステロールに対する確固たる作用があり,副作用プロファイルは許容しうるものであり,また,この研究の検出力の制約の範囲内では,トルセトラピブでみられたような有害な心血管系作用はみられなかった.(Merck Research Laboratories 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00685776)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2010; 363 : 2406 - 15. )