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August 5, 2010 Vol. 363 No. 6

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遺伝性血管性浮腫に対する新規ブラジキニン受容体拮抗薬イカチバント
Icatibant, a New Bradykinin-Receptor Antagonist, in Hereditary Angioedema

M. Cicardi and Others

背景

遺伝性血管性浮腫は,皮膚,喉頭,消化管に生じる血管性浮腫の反復性発作を特徴とする.ブラジキニンは症状の重要なメディエータである.イカチバント(icatibant)は選択的ブラジキニン B2 受容体拮抗薬である.

方 法

2 件の多施設共同二重盲検無作為化試験において,皮膚または腹部に発作を起こした遺伝性血管性浮腫患者を対象に,イカチバントの効果を検討した.血管性浮腫の皮下投与治療(For Angioedema Subcutaneous Treatment:FAST)-1 試験では,患者にイカチバント投与またはプラセボ投与を行い,FAST-2 試験ではイカチバント投与またはトラネキサム酸 3 g/日の 2 日間経口投与を行った.イカチバントは 30 mg を 1 回,皮下投与した.主要エンドポイントは,臨床的に有意な症状の改善がみられるまでの時間の中央値とした.

結 果

FAST-1 試験では計 56 例,FAST-2 試験では計 74 例の患者を無作為化した.主要エンドポイントは,FAST-1 試験ではイカチバント群が 2.5 時間であったのに対し,プラセボ群が 4.6 時間であった(P=0.14).FAST-2 試験ではイカチバント群が 2.0 時間であったのに対し,トラネキサム酸群が 12.0 時間であった(P<0.001).FAST-1 試験では,イカチバント群の 3 例とプラセボ群の 13 例が救済薬による治療を要した.患者と試験責任医師が評価した症状の最初の改善までの時間の中央値は,両試験ともイカチバント群のほうが有意に短かった.イカチバントに関連する重篤な有害事象は報告されなかった.

結 論

急性発作を起こした遺伝性血管性浮腫患者において,主要エンドポイントに関しては,1 件の試験ではイカチバントにトラネキサム酸に比べて有意な有益性が認められたが,もう 1 件の試験では,イカチバントにプラセボに比べて有意な有益性は認められなかった.救済薬を早期に使用したことにより,プラセボ対照試験におけるイカチバントの有益性が不明瞭になった可能性がある.(Jerini 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00097695,NCT00500656)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2010; 363 : 532 - 41. )