抗てんかん薬服用患者における自殺関連事象
Suicide-Related Events in Patients Treated with Antiepileptic Drugs
A. Arana and Others
臨床試験データを対象に行われたメタアナリシスから,抗てんかん薬の使用と自殺傾向(自殺念慮,自殺行為,またはその両方)との関連が示されている.われわれは,観察データを用いて,てんかん患者,うつ病患者,双極性障害患者における抗てんかん薬の使用の有無と,自殺関連事象(自殺未遂,自殺既遂)との関連について検討した.
英国の一般集団を代表する患者の臨床治療の一環として収集されたデータから,てんかん患者,うつ病患者,双極性障害患者を同定し,抗てんかん薬が投与されていたかどうかを調査した.自殺関連事象の発生率を評価し,ロジスティック回帰モデルを用いてオッズ比を算出し,交絡因子を補正した.
患者 5,130,795 例から成るコホートにおける自殺関連事象の 100,000 人年あたりの発生件数は,てんかん,うつ病,双極性障害のいずれでもなく抗てんかん薬を使用していない患者で 15.0(95%信頼区間 [CI] 14.6~15.5),てんかんを有するが抗てんかん薬を使用していない患者で 38.2(95% CI 26.3~53.7),てんかんを有し抗てんかん薬を使用している患者で 48.2(95% CI 39.4~58.5)であった.補正した解析では,抗てんかん薬の使用と自殺関連事象のリスク上昇に,てんかん患者(オッズ比 0.59,95% CI 0.35~0.98)と双極性障害患者(1.13,95% CI 0.35~3.61)では関連を認めなかったが,うつ病患者(1.65,95% CI 1.24~2.19)と,てんかん,うつ病,双極性障害のいずれでもない患者では有意な関連を認めた.
抗てんかん薬を使用中であることは,てんかん患者における自殺関連事象リスクの上昇と関連していなかったが,うつ病患者と,てんかん,うつ病,双極性障害のいずれでもない患者においては,そうしたリスクの上昇と関連していた.