メディケア支出における地域差の原因解明
Clarifying Sources of Geographic Differences in Medicare Spending
S. Zuckerman and Others
メディケア支出における地域差は,プログラムの非効率性を示すものであると広くみなされているが,政策決定者は,そうした地域差を縮小するための政策を立案する前に,受給者の健康特性と個人特性,特定の地域的要因の違いが,受給者 1 人あたりの支出にどのような影響を及ぼすのかを認識する必要がある.
2000~02 年のメディケア現行受給者調査(Medicare Current Beneficiary Survey)を用いて,支出における地域差を検討した(同一期間における受給者 1 人あたりのメディケア支出をもとに五分位に分類).人口統計学的特性,ベースラインの健康特性,健康状態の変化,その他の個人特性,医療資源供給に関する地域別の評価指標を組み合わせ,1 人あたりの支出の多変量回帰モデルを推定した.それぞれの変数グループを順次モデルに取り入れ,支出における地域差に及ぼす影響を評価した.
受給者 1 人あたりの未補正のメディケア支出は,支出が最高五分位群の地域で,最低五分位群の地域より 52%多かった.この差は,人口統計学的特性,ベースラインの健康特性,健康状態の変化で補正すると,33%に減少した.受給者 1 人あたりの支出における未補正の地域差の 29%は健康状態に起因するものであった.医療資源供給の地域レベルの差で追加的に補正しても,最高五分位群と最低五分位群のあいだの差がさらに縮小することはなかった.
メディケア支出の地域差を縮小することでメディケア支出を抑えようとする政策決定者の試みには,差を生じさせる特定の要因についてより確かな情報が必要であり,また,受給者の健康指標において基礎にある差を説明するためにも,支出レベルを補正するよりよい方法が必要である.