肥大型心筋症の初期症状としての心筋線維症
Myocardial Fibrosis as an Early Manifestation of Hypertrophic Cardiomyopathy
C.Y. Ho and Others
心筋線維症は肥大型心筋症の特徴であり,不整脈および心不全の基質であると提唱されている.動物モデルでは,線維化促進遺伝子経路は,早期に,すなわち肥大を伴うリモデリング前に活性化される.肥大型心筋症患者におけるサルコメア蛋白遺伝子変異に対する早期の線維化促進応答を示すデータは不足している.
心エコー,心臓 MRI,コラーゲン代謝・血行力学的ストレス・心筋障害の血清バイオマーカーを用いて,肥大型心筋症と,確認されている遺伝子型を有する患者を評価した.
病原性サルコメア変異と顕性肥大型心筋症を有する被験者 38 例,変異を有するが左室肥大のない被験者 39 例,変異を有しない対照 30 例を対象とした.1 型プロコラーゲン C 末端プロペプチド(PICP)の血清濃度は,左室肥大のない変異保有者と顕性肥大型心筋症患者において,対照に比べて有意に高かった(それぞれ 31%,69%高い;P<0.001).PICP の 1 型コラーゲン C 末端テロペプチドに対する比は,顕性肥大型心筋症患者においてのみ高く,コラーゲンの合成が分解を上回っていることを示唆していた.心臓 MRI 検査では,遅延相でのガドリニウム増強効果を顕性肥大型心筋症患者の 71%で認め,心筋線維症であることが示されたが,これは左室肥大のない変異保有者では認められなかった.
血清 PICP 濃度の上昇から,顕性肥大型心筋症のないサルコメア変異保有者では,心筋コラーゲン合成が増加していることが示された.この線維化促進状態は,左室肥大や MRI で確認できる線維症の発症に先行して認められた.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた)