March 24, 2011 Vol. 364 No. 12
台湾におけるカルバマゼピン誘発性毒性と HLA-B★1502 のスクリーニング
Carbamazepine-Induced Toxic Effects and HLA-B★1502 Screening in Taiwan
P. Chen and Others
抗痙攣薬でありかつ気分安定薬であるカルバマゼピンは,東南アジア諸国において,スティーブンス–ジョンソン症候群(SJS)とその関連疾患である中毒性表皮壊死症(TEN)の主要な原因となっている.カルバマゼピン誘発性 SJS/TEN は,HLA-B★1502 対立遺伝子と強く関連している.この病態に対する遺伝学的リスクを有する人を事前に同定するために HLA-B★1502 のスクリーニングを行い,カルバマゼピン誘発性 SJS/TEN の予防を試みた.
台湾の 23 病院から,カルバマゼピン服用歴のない 4,877 例の候補者を募集した.被験者の末梢血から精製した DNA の遺伝子型解析を行い,HLA-B★1502 対立遺伝子の有無を調査した.HLA-B★1502 陽性例(全体の 7.7%)にはカルバマゼピンを服用しないよう助言し,代替薬を提供するか,この研究に参加する前に使用していた薬剤を継続するよう勧めた.陰性例(92.3%)にはカルバマゼピンの服用を勧めた.症状のモニタリングのため,被験者には週 1 回の電話問診を 2 ヵ月間行った.SJS/TEN の過去の推定新規発症率を対照として用いた.
被験者の 4.3%に一過性の軽度の発疹が認められ,0.1%ではより広範囲に発疹が出現したため入院した.カルバマゼピンの服用を開始した HLA-B★1502 陰性例では,SJS/TEN は発症しなかった.一方,カルバマゼピン誘発性 SJS/TEN の過去の推定新規発症率(0.23%)をこの研究の被験者に適用すると,約 10 例になる(P<0.001).
HLA-B★1502 対立遺伝子の保有者を同定し,カルバマゼピン療法を避けることは,カルバマゼピン誘発性 SJS/TEN の発症率低下に強く関連していた.(台湾国家科学委員会,台湾薬害救済基金会から研究助成を受けた.)