March 31, 2011 Vol. 364 No. 13
介護施設におけるケアの質と過失訴訟との関係
Relationship between Quality of Care and Negligence Litigation in Nursing Homes
D.M. Studdert and Others
質の高い保健施設は,過失に対する訴訟を起こされる可能性が,質の低い施設よりも低いかどうかは明らかではない.
1998~2006 年に提起された,介護施設 1,465 ヵ所の不法行為に対する訴訟に関する情報を,米国の 2 つの全国データベース(オンライン調査・認証・報告システム,最小データセット・質の指標報告)より抽出した介護施設の質の 10 指標と関連付けた.施設のクラスタリングで調整し,患者特性,所有者組織,入居率,年,州で補正して,訴訟の発生率と施設の暦四半期ごとの質の指標との関連を検討した.質の各指標が 1 SD 変化したときに,各施設の暦四半期に訴訟が 1 件以上発生するオッズに及ぼす影響についてオッズ比を算出した.
不備が多い介護施設(オッズ比 1.09,95%信頼区間 [CI] 1.05~1.13)や,より重大な不備が多い介護施設(オッズ比 1.04,95% CI 1.00~1.08)は訴訟を起こされるオッズが高く,これは,体重が減少した入居者が多い介護施設(オッズ比 1.05,95% CI 1.01~1.10)や,褥瘡を有する入居者が多い介護施設(オッズ比 1.09,95% CI 1.05~1.14)においても同様であった.訴訟を起こされるオッズは,入居者・日あたりの看護介助時間の多い介護施設のほうが低かった(オッズ比 0.95,95% CI 0.91~0.99).しかし,これらの影響はいずれも比較的小さかった.たとえば,不備に関してもっとも成績のよい(10 パーセンタイル)介護施設の年間訴訟リスクは 40%であったのに対し,もっとも成績のわるい(90 パーセンタイル)介護施設では 47%であった.
もっとも成績のよい介護施設が起こされる訴訟の数は,もっとも成績のわるい介護施設よりわずかに少なかった.差がこのように小さいのであれば,より安全なケアを提供するための動機付けとしての訴訟の力は損なわれるかもしれない.