April 28, 2011 Vol. 364 No. 17
虚血性左室機能不全における心筋生存能と患者生存率
Myocardial Viability and Survival in Ischemic Left Ventricular Dysfunction
R.O. Bonow and Others
心筋生存能の評価は,冠動脈疾患と左室機能不全を有する患者で,冠動脈バイパス術(CABG)により生存上の利益が得られる可能性のある患者を同定するために用いられている.しかし,この方法の有効性は明らかにされていない.
冠動脈疾患と左室機能不全を有する患者を対象に,薬物療法を単独で行う治療と,CABG との併用で行う治療とを比較した無作為化試験のサブスタディとして,単光子放射型 CT(SPECT)またはドブタミン負荷心エコー検査,あるいはその両方により,事前に規定した基準値に基づいて心筋生存能を評価した.
無作為化試験に登録された患者 1,212 例のうち,601 例が心筋生存能の評価を受けた.そのうち 298 例を薬物療法+CABG に,303 例を薬物療法単独に無作為に割り付けた.生存心筋を有する 487 例中 178 例(37%)と,有しない 114 例中 58 例(51%)が死亡した(生存心筋を有する患者における死亡のハザード比 0.64,95%信頼区間 [CI] 0.48~0.86,P=0.003).しかし,その他のベースライン変数で補正すると,この死亡率との関連は有意ではなくなった(P=0.21).心筋の生存状態と治療割付けとのあいだに,死亡率に関する有意な相互作用は認められなかった(P=0.53).
生存心筋の存在は,冠動脈疾患と左室機能不全を有する患者において高い生存率と関連したが,この関連はその他のベースライン変数で補正すると有意ではなくなった.心筋生存能を評価しても,CABG により薬物療法単独と比較して生存上の利益が得られる患者は同定されなかった.(米国国立心臓・肺・血液研究所から研究助成を受けた.STICH ClinicalTrials.gov 番号:NCT00023595)